第1章 近くて遠い君 ※【黒尾鉄朗】
うちは親が共働きだから、平日のこの時間は俺一人しかいない。
誰もいないリビングに入りコーラだけを冷蔵庫に入れる。
スマホを取り出したタイミングで、丁度梨央ちゃんからのLINEが入ってきた。
[てっちゃんち着いたんだけど、いる?]
俺は玄関に向かい、ドアを開ける。
そこにはパーカーにジーンズ姿のラフな格好をした梨央ちゃんが立っていた。
「ごめんね。いきなり…」
「暇してたし大丈夫。入る?俺しかいねーし、気遣わなくていいよ」
「うん…」
先にドアの内側に入り、梨央ちゃんを待つ。
俺の後ろにいた梨央ちゃんは、そこで足を止めた。
「お父さんね、亡くなった」
「……」
「あの日、私が病院着いて30分も経たないうちに……」
「……そっか。梨央ちゃんが来るの、待ってたのかもしんねぇな」
「うん。私も……そんな気がする…、っ…」
肩を震わせ顔を覆う梨央ちゃん。
「ごめ…っ…まだ、思い出すと…ダメで…」
しゃくり上げる声が響いてる。
中一のあの時。
公園のベンチで泣いてる梨央ちゃんに、どうしていいかわかんなかった。
でも今は、こうしてやりたいって思う。
体が無意識に動いた。
梨央ちゃんの手を引いて、玄関へ連れてくる。
それからドアを閉めて…
震える体を抱き締めた。
細い肩が、震えてる。
震えながら、泣いてる。
俺より大人の梨央ちゃんが、俺の腕の中で泣いている。