第18章 【拾伍】炭治郎&炎&水(鬼滅/最強最弱な隊士)
鉄鍋の中で味醂と醤油がふつふつと泡立ち、追い掛けるように甘辛い香りが台所を支配し始める。もしかしたら広間に居る姐さん達にも届いていて、空腹中枢を刺激されているかもしれない。そうなると一刻の猶予も無いだろう。
迷わず上白糖の山に指先を沈めて三分より僅かに多く摘む。日頃から手に馴染んだ五厘硬貨の重みを基準にし、そこから二分引いた微かな圧力を指の腹で探り当てる事にした。少し擦り合わせたら止めて、また擦り合わせたら止めて。
皮膚が三分を捉えた時点で即座に引き上げ、甘辛タレの中へ均等に振り入れた。味醂と醤油に馴染んだ上白糖が鋭利な塩味の角を丸め、理想的な照りへと姿を変えていくだろう。立ち昇る蒸気に絡み付く調和の取れた香ばしさが鼻腔を擽る度に『空蝉』の忠実性を誇らしく思う。
(良い匂い……)
とろみを帯び始めたら木べらで掬い上げ、繰り返し鰤の身に掛けていく。次第に表面へ黄金色の膜が重なっていき、磨き上げられた漆器のような光沢を放ち始めたら──垂涎ものと言って差支えの無い完璧な主菜の完成だ。
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「伊之助、竈門。配膳行くぞ」
「ガハハハハッ! 朝飯前だぜッ!」
「任せてください!」
四段ほど積み上げたお櫃、飯椀と汁椀を伏せて積んだ黒漆の手付盆を伊之助へ抱えさせ、番茶で満たされた大薬缶、湯呑みを揃えて並べた赤漆の手付盆を竈門へ握らせる。二人へ「慎重にな」と口添えしながら上がり框を昇る俺はと云えば、粕汁で満たされた大鍋の手付を乾布越しに掴んで運んでいる。
装う為のお玉は抜け落ちないように鍋底へ押し込んであるが、万が一に備えた予備も抜かりないし、しゃもじや菜箸も何組か束ねて持ってきたので問題ない。
広間へ入ると、気の合う相手との語らいに花を咲かせていた十一人分の声がぴたりと止んだ。九名の柱達、蟲柱殿の横で縮こまるカナヲ、そして鉄穴森さんである。上座下座関係無く銘々が好きなところに座して当然の様に長卓を囲っている姿に頭痛が治まらない。
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