• テキストサイズ

日章旗のデューズオフ

第18章 【拾伍】炭治郎&炎&水(鬼滅/最強最弱な隊士)



ジウジウと脂を弾かせながら火が入り、軈て皮が飴色に変化していく壮観な眺めに一つ頷くと、横から優しく菜箸を差し込む。萩野食堂の親父さんは土製焜炉から一度も顔を上げず、これを手際良く裏返していた。身を崩さないように一切れずつ丁寧に。躊躇わず、一気に。
「天麩羅ッ! 天麩羅ッ!」
「伊之助、いい加減にしないか!」
「今晩中に岩を押せたら、これとは別に作ってやるから」
俺に男の二言を確認しながら拳を突き上げる伊之助と取り押さえる竈門に背を向けて、調味料棚から本味醂と濃口醤油の一升瓶を手に取って下ろす。直ぐさま紫色の冠紙を外して使い込まれた木栓を抜くと、爆ぜる鰤の上へ円を描く様に二周ほど回し入れた。
途端、蜜を思わせるほど微かに粘度の有る味醂の甘い匂いと、発酵が強い醤油の濃い香りが台所いっぱいを満たす。吹き上がる煙に乗った食欲を唆る香りは、誰をも唸らせて黙らせる威力を秘めている。その証拠に、後輩達が静まり返った。
(……っはは、良いねぇ、欲に素直で)
二人の喉がごきゅりと鳴る可愛らしい音を聞きながら、上白糖が詰まった重い陶器の壺を下ろして木蓋を開ける。親父さんは此れが味の決め手だと笑っていたが、正確な分量が分かるような投入方法では無かった。​要するに『少々』という奴である。
脳内の記憶を引き摺り出し、親父さんの手元に置かれていた口径一寸の醤油徳利を基準に、摘み上げた量を逆算するか。それとも摘んだ際の指の隙間に出来た空間の容積、つまり指の関節の角度と指の腹が作る三角形の面積から、保持できる砂糖の安息角──粉末が崩れずに積み上がる角度──を考慮した円錐形の体積から算出するか。
どちらにしろ、記憶の中の親父さんが秋に鰤の照り焼きを拵えていた事を忘れてはいけない。今は真冬も真冬で、先刻までは粉雪も降っていた。秋とは相対湿度が異なる。乾燥時期より湿気を帯びたであろう砂糖の粘性を考慮し、充填率を微調整しなければならない。
(親父さんの指の太さと肉付きから推測するに一摘みの体積は……──、降雪による湿度下での上白糖の密度を掛けると……──凡そ三分といったところか。よし、再現できる)

/ 239ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp