• テキストサイズ

日章旗のデューズオフ

第15章 【拾弐】時透&煉獄(鬼滅/最強最弱な隊士)



己を正しく評価されず、行動の真意を読み解いて貰えず、ただ蔑まれ、忌み嫌われる……その孤独に傷付いていた過去があると見透かされるのは、この上なく不本意だった。選りにも選って悲鳴嶼でも御方でもない人に暴かれた事実が、動揺を加速させる。
(……)
霞柱殿がこの無謀な提案を弄しているのは、単なる論理の飛躍でもなんでもないという事なのか。俺の中に眠る、俺自身さえも否定し続けてきた「名前」としての矜持を、態と逆撫でして引き摺り出そうとしているかのようで。
(……)
掴みどころのない霞の奥に潜む、確かな熱量を持った好奇心。それに気付いた瞬間、背筋を伝う汗が一段と冷たさを増していくのが分かった。
踵で泥濘を磨り潰しながら踏鞴を踏むように後退すると、逃げ水のように朧気な気魄を蹴り破った小さな歩みが、ゆっくり距離を詰めてくる。
やがて肩に、逃れようのない重みが加わった。雅号の響きのせいか浴びせられる言葉の澆漓が際立っているせいか、彼の掌は膚を刺すように冷たいものだと勝手に思っていたが。
「岩注連さんにも損は無い話だよ。柱が三人以上集まったということは上弦の鬼一匹を相手するのとほぼ同義だからね。稽古にもなるし、実力を示せる絶好の機会じゃない?」
「……まぁ、それはそうですが」
「最近『瑠璃も玻璃も照らせば光る』って諺をいろはかるたで覚えたんだけど、優れた才能や素質を持つ者は、どこにいても際立つって意味なんだって。岩注連さんの事でしょ、これ。もう貴方は影に隠れていられないほど強大なものに成り果ててる。皆の興味の中心に居る。いつまでも燻らせてたら勿体無いよ」
「……俺は──」
「その辺で止めた方がいい」
霞柱殿の言葉に飲まれかけた、その時。正真正銘の焔、陽炎と見紛う気魄を焚き締めた杏寿郎さんが割り込んで、少年の細い手首を掴んだ。その相貌、双眸は共に穏やかで、勇んで介入したにも関わらず、俺達に憤りを覚えているようにも見えなかった。

/ 202ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp