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日章旗のデューズオフ

第15章 【拾弐】時透&煉獄(鬼滅/最強最弱な隊士)



「……お待ち下さい。俺が試合に参加してしまっては、型を見落とす可能性があります。先刻の後輩相手の試合、ご覧になっていましたよね。俺は背面からの攻撃は止めろと彼らに何度か伝えています。同時に攻撃を仕掛けられてしまえば、その度に同じ轍を踏むかも。空蝉が不完全になってしまいますよ」
「不完全を不完全のままにしておくわけないでしょ。炭治郎達みたいに、一度で駄目なら二度、二度で駄目なら三度、そうして追い込んで追い込んで貴方の中に叩き込むだけだよ」
「叩き込まれるより、客観的視点から観察した方が早いと申し上げているんです。だからこそ柱同士の二対二で事足ります。刻が惜しいと仰られましたが、一対四も二対二も同じ『ひと試合』ですから。何も違わない」
「何も違わないんだったら振り分けを変えることくらい問題ないよね。貴方の言う通り、一対四も二対二も同じ『ひと試合』なんだもんね?」
「……」
忍時代、その配置換えこそが命を危険に晒してきた場面を、数え切れないほど見てきた。結果を急ぎ過ぎるあまりに命の維持と保護を軽視するような采配を聴くと、我々を道具としか思っていない莫迦な奴らと印象が重なって虫唾が走る。
「ねえ、『漆黒の迦楼羅』さん。これってそんなに難しいこと? 貴方には充分な実戦経験があるんでしょ?」
「……止めて下さい、その呼び方」
「どうして。火のない所に煙は立たないというよね。漆黒の迦楼羅の異名ってさ、貴方自身が思うよりずっと『お飾り』なんかじゃないと思うけどなぁ」
「……迦楼羅は神の名ですよ。そんな訳ないじゃないですか。誰が広めたにしろ、分不相応な噂を流布して莫迦にしてるだけです」
「悔しいと思わないの?」
「今更、別に」
「……ふーん」
なんだ……今のは。冷徹な理屈の往来の中で突然、剥き出しの情を突きつけられた気がする。吐息のようないらえが、心の防壁を容易く擦り抜けて最奥へと染み込んだ瞬間、少年らしい無垢な問いに、あろうことか人らしく扱われた充足を覚えた。
その証左として「今更」という言葉を零した己に、猛烈な嫌悪が込み上げ、堂々と舌打ちしてしまう。時機を逸して今新たに……だなんて、嘗て悔恨を抱いた瞬間があったと認めたも同義ではないか。

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