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日章旗のデューズオフ

第15章 【拾弐】時透&煉獄(鬼滅/最強最弱な隊士)



「悲鳴嶼ッ! 話は済んだかッ!」
「人のッ……クソッ、人の耳の傍で叫ぶんじゃねェ煉獄ッ!」
俺と霞柱殿の間に漂う異様な雰囲気を本能で察し、適切な介入の時機を窺っていたのだろうか、杏寿郎さんがここぞという間で喇叭も斯くやな大音声を放った。片耳へ指を突っ込んだ状態の風柱殿が駄目押しの怒声を咆哮して悲鳴嶼の注意を引いたので、釣られるように俺も振り返る。
「……そうだな、みな待たせた。……直ぐにでも始めよう」
念珠が擦れ合う音と共に御山が動く。俺も羽織を返そうと身動いで合蹠を解いたが、直ぐさま「まだ着ていなさい」と掌で制された。既に指先まで熱を帯びていて低体温症状に陥る心配は無いのに、悲鳴嶼は決して首を縦に振らなかった。
「……それでは試合が終わるまでお借りしています」
「ああ」
とはいえ俺の上背でも身に余る丈と幅の羽織だ。移動するにしても引き摺ってしまっては申し訳が立たないので、日輪刀の柄と鞘を結ぶ下緒──例の、柄の縁金と鞘の栗形を熨斗結びで繋ぐ頑強な組紐だ──を帯締めに転用する事にした。実はこれも忍の『下緒七術』が一つである。
羽織の裾を背後に跳ね飛ばし、その隙に鞘ごと日輪刀を抜いて地面に伏せ置き、手早く下緒の両結び目を解く。そして翻って戻ってきた抹茶色の羽搏きを手繰り寄せて袷を正すと、その上から胴囲に巻き付けて丈を調節する。最後に下緒の隙間へ刀を差せば完了だ。
「よし」
「へえ。気合入ってるね」
「え。……いや、俺に気合いが必要な場面では無いはずですが」
「…………」
俺からの当然の疑問に対して、不敵な笑みで返事をした霞柱殿に嫌な予感がした。忍として、鬼殺隊士として、部下として培われた勘が『言葉で返事をしない者は腹に逸物を抱えているぞ』と告げている。今から霞柱殿が宣う悉くに『絶対に同意を示すな』と警鐘を鳴らしている。
俺の戦慄きなど意に介さない少年は、烏の濡れ羽色が眩しい長髪を肩口に巻き付けながら悲鳴嶼達を振り返った。幼い背中が膨らんで見えたのは、彼が仰々しく両腕を広げた事で、規格外の隊服が衣桁に掛かったかのように広がったからだ。

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