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日章旗のデューズオフ

第15章 【拾弐】時透&煉獄(鬼滅/最強最弱な隊士)



慎み深い生活を送る悲鳴嶼は、作り手の労苦を慮っているのか或いは別の理由が有るのか定かではないが、体格の割に食事量はそう多くない。療養していた杏寿郎さんの方がよほど遠慮知らずに良く召し上がるくらいだ。そんな経緯が有るからこそ、山盛りの付け合わせが乗った善哉を頬張る悲鳴嶼を想像してしまうと余計に片腹が絞られた。
「ッ……ひ、悲鳴嶼さんも俺の善哉、いっぱい食べて下さいね、姐さんが気後れしない為にも、ご協力お願いします……」
「……う、うむ」
傍らに座す巨躯は俺の冗談を真に受けたのか、唇を引き結んで眉尻を下げると、何時にも増して荒い手付きで南紅瑪瑙の念珠を揉みしだいた。その姿に『きゅん』としないでも無かった。否、素直に認めてしまおう。動揺を隠せない悲鳴嶼が可愛い。
公私の乖離によって人の心を惹き付ける魅力は、悲鳴嶼自身も十二分に持ち合わせていると思う。身内贔屓かも知らないが。戦場で阿修羅の如く立ち回る雄々しき姿の影には、野良猫を抱き抱えて頬擦りする穏やかな姿が在るのだ。
すると相対的に、姐さんは裏表の無いほうかもしれない。公私が上手く融合して優れた人格を形成出来ている最たる例だと、考えを改めよう。大喰らいな性質を隠していないし、嘗ての俺のように、頭髪の地色を隠してはいないのだから。まぁそもそも鬼殺隊で裏表の無い御仁など早々居ないように思うし、そこに来て名を挙げられる方など、杏寿郎さんぐらいではないだろうか。
(……噫、そうだった。あそこは師弟関係だった)
──道理で似ている筈だ。裏表の無さも、健啖家なところも。そして万物を等しく照らすような笑顔の明るさも。心に温かな焔を灯していく性質さえ似ている。姐さんにとっての杏寿郎さんは師範以上の繋がりを得られる人なのだろう。だからこそ人間性すら似通う。先進的で、名状し難き次世代の繋がりを内に秘める、とても公平な関係性だからこそ。
その悉くに甘く屈して、見た事もない人間臭い表情を見せる悲鳴嶼の傍らに在ると、それぞれの雅号に準えるかのように、日本神話の天岩戸の再現芝居でも観ているような錯覚に陥る。そんな場違いな空想に耽ってしまうほどに心が安らいでいた。
(……あれ、でもそうすると天岩戸が隠していたものって…………まぁいいか、そんなこと)

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