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日章旗のデューズオフ

第15章 【拾弐】時透&煉獄(鬼滅/最強最弱な隊士)



「伊黒さん……ッ、私たち勝った、勝ったよぉ……ッ!」
胸元から転び出ては拙いものが転び出そうなほど勢い良く跳ね飛ぶ姿は欣喜雀躍の如きである。そうして喜びを全身で表現した姐さんは、「そうだな、甘露寺。後半の連携は良かった」と優しい声で答えた伊黒大兄を振り返ると、太陽も俯いて身を窶すような眩しい笑顔の花を咲かせた。
他の柱の目を意識して一瞬だけ爪先を揃えて見せたものの、溢れ出す歓喜は留まるところを知らないらしい。鮮やかな若草色の毛先が不規則に覗く結い髪を胸元へ手繰り寄せ、心底幸せそうに微笑む。その姿には、模擬試合の勝利以上に、愛する大兄の傍らで上手く立ち回れたことへの安堵が滲んでいて、見ている此方が思わず吐息を漏らす程だ。
天真爛漫な戀の体現者である姐さんも最高階級を冠している柱なのだと再認識させられた先刻とは大違いの姿だ。こういう公私の乖離が激しければ激しいほど、それに心奪われて愛おしく思う者も多いだろうと膝を打つ。
頬が緩むのを隠そうと然り気無く口元を覆ったが、その仕草が却って悪目立ちしたらしい。大兄越しに目が合った姐さんは、開襟の危うい隊服の造りなどお構い無しに、肩から大きく手を振ってきた。
(……向日葵みたいだ)
僅かな疲労が滲む表情の中に夏の大輪を見る。伝来当初は丈菊と呼ばれていた向日葵が、『方々へ向いて花を開けて回る』姿から日廻りと呼び名が転じた花だと良く分かった。
とうとう我慢が利かずに吹き出して軽く手を振り返すと、彼女は構われた子犬のように一層喜んだ。分かり易い愛想を振り撒いたからか、いよいよ伊黒大兄も姐さんの視線を辿るように此方を振り返ってしまい、本物の向日葵の色味を有する鮮やかな黄色の瞳で睥睨してくる。悪気も他意も無いのだという含みを込めた微かな笑みを向ければ、直ぐに外方を向いてくれたけれど。
「名前くーんッ、私、いっぱい善哉食べるからねーッ♡」
「……ッ、ふは!」
さて、『栗と薩摩芋の甘露煮は悲鳴嶼の椀の三倍は盛る』と公に約束した手前、姐さんが量を召し上がれば召し上がるだけ、逆説的に悲鳴嶼もその三分の一を食べなくてはならない事実が光る。

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