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日章旗のデューズオフ

第14章 【拾壱】岩&風&霞(鬼滅/最強最弱な隊士)



(……そういえば我妻は招集されなかったんだな。近場に居ない可能性が高い獪岳はまだしも、アイツはすぐ側に居ただろうに。貴重な雷の呼吸の使い手を、悲鳴嶼さんが見逃す筈はないし……)
俺はこの時、獪岳本人をも焼き尽くすような雷霆の如き激しい怒りが、何に対して強く向けられているのか理解しかねていたが、後に竈門から「善逸は壱ノ型だけを扱うようです」と伝えられた事で、全てに合点がいったのだった。

***

羽織と日輪刀を回収しつつ、もう一枚の三尺手拭いで髪と膚の水気を適当に吸い取りながら風柱殿の居る輪へ向かうが、彼らから少し離れたところで念仏の一節を唱えながら合掌している悲鳴嶼の姿が目に留まって蹈鞴を踏む。
傍へ寄る為には分かり易く歩数が掛かって、最序盤で接近を勘付かれれば気拙くなる絶妙な距離感である。だからこそ態となのだろう。話し掛けられたくないのだ。革帯の一件で此方を意図的に避けていると直ぐに分かった。参らぬ仏に罰は当たらぬぞと言わんばかりの態度に眉尻が下がる。
まさか、このまま黙殺して俺の決意に揺らぎが生じるのを、意欲が擦り切れるのを待つ心算だろうか。目を逸らし続ければ続けるだけ分が悪くなるのは彼の方なのに。信頼が紙縒りのように細くなって、築いてきた関係性に罅が入るだけなのに。
(……諦めたくない)
背中を膨らませた巨躯を一瞥し、頚の縄目痕に触れる。そして一息の間に悲鳴嶼の目前まで移動した。予備動作を最小限に抑えた反動で大腿や脹脛へ強烈な負荷が掛かり、駆け出す際に幾らか肉の筋を切る羽目になったが、お陰で彼の感覚が俺を捉える事は免れた。
「!」
「悲鳴嶼さん」
彼は未だ元忍たる継子の本質を理解していなかったらしい。水滴を飛沫させた濡れ鼠の俺が煙のように現れて虚を突かれたのか、真珠と見紛うほど美しい真白な瞳をキュッと小さく縮めて珍しく瞠目した。
そんな彼の太い手首に指先を掛けて、少し身を屈めて欲しい事を言外に伝えると、たっぷり逡巡した御山は渋々といった体で腰を折ってくれた。そういえば俺から私的に触れたのは初めてかもしれない。
「後ほど私室に、その、お伺いして良いですか」
「……」
「誓約書とか空蝉とか、俺について、色々……とにかくもっと、悲鳴嶼さんと話がしたいです」
「……」

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