第27章 小さな太陽と大きな背中
俺はメガネを畳み、鼻を摘んでやった。
『ふにゃ!···ちょっと影山!』
閉じていた目を開け、鼻を押さえながら城戸が抗議の目を向けてくる。
「うるせぇチビ!だいたいお前、メガネなくても見えてんだから慌てて掛ける必要ねぇだろ!」
『だって···もしかして掛けてくれるかな?とか』
「アホか!···つうか、お前。鼻の回りに泡ヒゲ出来てんぞ···プッ···」
『あーっ!泡だらけなの忘れてた!···影山のせいだからね!えいっ!』
「うわっ!なにしやがる!このっ!」
水道場に近付き、水を掬って飛ばしてやる。
『へへ~ん、残念でした』
菅「紡ちゃん!···オレを盾にするの、やめようよ···」
『お返し!』
菅原さんの後ろから、城戸も水を掬ってオレに投げて来る。
「ば~か、お前のヘナチョコアタックなんか当たる訳ねぇだろ!」
澤「影山···お前も俺の後ろに隠れるのやめろ···」
そんな言葉なんて夢中になってる俺達には届かず···数分後には泡だらけ、びしょ濡れの澤村さんと菅原さん、それから俺達の4人が佇んでいた。
菅「だから言ったのに···まったく」
『ごめんなさい···』
「サーセン···」
澤「···」
頭から水を滴らせる澤村さんの無言が、怖いッス。
それは城戸も同じで、ふと目が合うと苦笑を見せた。
澤「影山···」
「は、はいっ!」
澤「それから、紡」
『はい』
澤「罰として2人で体育館全面モップ掛け!今すぐ!」
『「 はいっっっ!!! 」』
澤村さんの声に、城戸と2人背筋が伸びる。
体育館の中へと競い合うように飛び込み、既にモップ掛けを始めようとしていた月島と山口に駆け寄った。
「山口!それ貸せ!」
返事を待たずに奪い取る。
『あ!影山ズルい!月島君!モップ貸して!!』
月「はぁ~、何なの急に···」
「城戸···どっちが先に終わるか勝負だ!」
『賭けるものは?』
「もちろん···ハンバーグ!」
『お先に~!!』
「きたねぇぞ!おいっ!待ちやがれ!」
この勝負は負けねぇ···絶対に。
俺のハンバーグがかかってるからな!
ケラケラと笑いながら走る城戸の背中に照準を合わせ、俺は本気で駆け出した。