第27章 小さな太陽と大きな背中
オレの腕や足を指差して紡が笑う。
「オレのはいいんだよ、男だからな。紡は女だからアザだらけとか困んだろ」
『男とか女とか、そんなの関係ない』
「え?」
『···何でもないです。いいんです、アザだらけで嫁の貰い手がなくなっても、可愛いお婆ちゃんになって世界征服するんだから』
世界征服とか···
「随分スケールが大きい話だな」
オレがそう言うと、紡は小柄だから夢は大きく!とか言ってまた笑った。
『西谷先輩···さっきの事を謝ろうとしているなら、聞きたくないです』
「でも!」
『私だって怒らせるような事を言ったんだし、お互い様っていうか···まぁ、どうしても謝るって言うなら、私も地面に頭擦り付けて土下座します』
土下座って、おい。
『なかった事にはしません。その時の私達のお互いの気持ちがぶつかって、あんな風になった事は事実だし。だから···』
「だ、だから?」
『この話はもうおしまい!って事です』
ケラケラと笑いながら、紡は蛇口を捻って水を出した。
お互い様···とは到底言えない事なのに。
それでも紡は、そうやって笑ってくれるんだな···
「紡···」
『はい?』
名前を呼び、振り返る紡を力一杯抱きしめた。
「お前、イイヤツだな···今日の帰りに、アイス奢ってやる!」
『あ、アイスですか?』
「あぁ、アイスだ」
···先輩、だからな。
対して変わらない背丈の耳元でそう付け足すと、紡は小さく笑って、じゃあイチゴ味がいいです、と返してくる。
『でも、西谷先輩。アイス奢ってくれるなら、今日の帰りじゃなくて、今度でいいですか?』
「今度?別にいいけど」
体を離しながら紡が言って、オレを真っ直ぐ見る。
『それから、アイスは···2個、奢って下さい』
「2個?それも構わないけど、お前、そんなにアイス好きなのか?···それとも、影山の分もって事か?」
『違いますって。私の分と···東峰先輩の分、です』
···旭さんの?!
紡の口から旭さんの名前を聞いて、体が固まる。
「旭、さんは」
戻って来ないだろ···そう言いかけて、紡の体から腕を離す。
『戻って来ますよ、絶対。だから、アイスはその時に奢って下さい』
「戻るって言ったのか、旭さんが」
『言ってません。でも、絶対戻って来てくれます···烏野の、エースだから』
