第27章 小さな太陽と大きな背中
そんなオレの呟きを拾い、城戸さんが笑う。
『だけど、大事なのは壁の高さ・・・かな?って。ほんのちょっと勇気を出して、壁の高さに気が付いたら・・・その時は、新しい最初の1歩を踏み出せますよ?』
新しい、最初の1歩・・・踏み出せるのだろうか、オレにも。
目を閉じれば、いつだって浮かぶ・・・あの日の出来事・・・
何度も何度もブロックされて相手のコートに届かなかったスパイクと・・・烏野コートに落ちていくボール・・・
それに懸命に拾い続ける西谷の姿。
それを絶対に繋いでくれた、スガの姿がよぎる。
オレが拾い続ければ!
エースにトスを繋げれば!
そんな絶対的信頼の中で毎回オレに繋がったボール。
それなのに・・・。
あの時・・・オレは・・・その信頼を裏切る様に、トスを呼ばなかった。
オレに繋いでも、スパイクは決まらない。
・・・だったらオレじゃなくて、他のヤツが打った方が。
そう思ったら、トスを・・・呼べなかったんだ。
今更、合わせる顔なんて・・・どこにもない・・・
『東峰先輩、もし、それでも1歩を踏み出すのに躊躇するなら、その時は・・・』
「そ、その時は?」
『私が後ろからドーーーーン!って押してあげます!・・・でも私ちっちゃいから跳ね返っちゃうかも?!・・・あっー!!自分でちっちゃいとか言っちゃった!!ちっちゃい事、気にしてるのにぃ!』
ベッドの上で手足をバタつかせながら、んン~っと悶える姿を見て、思わず吹き出した。
「キミはほんとに・・・プッ・・・クククッ・・・不思議な子だね・・・」
1度笑い出してしまったら、なかなかそうは止まらない。
『東峰先輩・・・笑い過ぎですよ・・・』
プウっと膨らましている頬を見て、オレはまた笑った。
こんなに笑ったのなんて、何日ぶりだろうか。
そう思ってしまう程、会ったばかりの小さなマネージャーに、オレはなぜか・・・心を溶かし始めていた。
「あの、さ?ちょっと聞いてもいいかな?」
ひとしきり笑ったあと、話の中で疑問に思った事が知りたくて、そう問いかけてみる。
『いいですよ?』
「城戸さん、の・・・バレーから離れたくなった理由って、なに?」
『・・・・・・え?』
一瞬にして空気が変わったのがオレにもわかった。
さっきまで朗らかに笑っていた表情が、少しずつ曇っていく。
