第27章 小さな太陽と大きな背中
「今すぐオレから・・・逃げたい、とか?」
その言葉に、紡ちゃんの瞳が大きく揺れた。
『別に、そういう訳じゃ・・・あの、ほら!帰らないと、みんな心配するし、及川先輩だってハジメ先輩からも連絡とか、あっ・・・』
紡ちゃんの口から岩ちゃんの名前を聞いて、堪らずもう1度腕に閉じ込めた。
「そんなに岩ちゃんの事ばかり気になる?いま一緒にいるのはオレだよ!それにさっき、部活って・・・もしかして、烏野の誰かを好きになった?それとも、まだ・・・岩ちゃんの事、好き?」
『・・・なんで、そんな事を聞くんですか?』
「紡ちゃんが、いつまで経っても岩ちゃんの事ばかり見てるからだよ・・・」
ふわふわの髪に顔を埋め、耳元で呟く。
『もう、終わってる、んですよ?なのに、どうして・・・これからちゃんと、前を向こうって、だから、マネージャーの事も受けました・・・なのに・・・』
体を震わせ、言葉を詰まらせながら、ポツリポツリと紡ちゃんが言葉を投げる。
きっと、紡ちゃんは泣いてる。
・・・泣かせたのは、オレ自身。
なに、焦ってんだろう・・・オレ。
でも、それはきっと・・・オレの中の、弱さだ。
岩ちゃんの事や烏野の連中が、グルグルと心を乱していく。
それを振り払うように、オレは紡ちゃんの甘い香りを吸い込んだ。
「紡ちゃん、ゴメン・・・泣かせるつもりじゃなかった・・・」
震える肩を抱きしめ、髪を撫でる。
『・・・及川先輩、私・・・今日は1人で帰ります。雨に濡れても、それでも・・・』
「何言ってんだよ、オレが送って行くって、」
オレの言葉を遮るように、紡ちゃんが首を振って顔を上げた。
『1人で、帰ります』
その顔を見て、思わず息を飲む。
涙で艶を帯びた長いまつ毛、涙でキラキラと反射する大きな瞳に・・・目も、心も奪われる。
無意識に手を伸ばし、紡ちゃんの頭を引き寄せる。
「紡ちゃん・・・ゴメン・・・」
体の奥で、理性を繋ぐ鎖が・・・切れた・・・