第6章 真珠を量る女(ロー)
「・・・仕方ねェな」
クレイオの願いが届いたのか、ローは残念そうに肩をすくめると、再び布団の上でうつ伏せの姿勢を取った。
「おれはこれでもお前に敬意を払っている。お前が“女”ではなく、“彫り師”でありたいと思うなら、それを尊重してやる」
「ロー・・・」
「だがお前は一つ、勘違いをしてる」
確かに自分は、一つの場所に根を下ろすことのない海賊だ。
だからといって、二度と同じ場所に戻ってこないわけでもない。
「おれはお前との関係をここで終わりにするつもりはねェ」
幸いにも、ここはグランドラインの“楽園”と“新世界”の間に位置する島。
行き来するには必ずここを通らなければならない。
「そのうちまたこの島に来ることもあるだろ・・・その時は必ずお前に会いにくる」
「・・・・・・・・・・・・」
「その時のおれは“客”じゃねェから、お前も“彫り師”でいる必要はねェぞ」
だから、今日の分も含めて抱かせてもらう。
ローは二ヤリと笑い、作業を再開するように目くばせをした。
これが最後になるだろう、ノミの先に取り付けられている針が音を立て始める。
チャッチャッ
チャッチャッ
背中に再び走る鋭い痛みが、ローには快感とすら思えた。
「気持ちいいな・・・新世界に行っても忘れられそうにねェ」
「貴方はどう見てもサディストの顔をしているけれど、痛みに悦びを覚えるマゾヒストなの?」
「おれがサドなのか、マゾなのか・・・いつかまたお前を抱く時に、その身体で確かめさせてやるよ」
「・・・楽しみにしてる」
だったら、絶対に新世界で死なないで。
この島に戻ってきてよ。
口にできない言葉を噛み殺し、代わりにローの肌へその想いを突き刺す。
偉大なる航路の後半の海には、想像を絶する恐ろしさの海賊達が当たり前のようにいる。
“トラファルガー・ローは、シャボンディ諸島に現れたか?”
笑っているのに、低く冷たい声。
貴方がどれだけ強かろうと、高額の賞金首だろうと、“あの方”のような海賊の前には無力も同じ。