第6章 真珠を量る女(ロー)
「ねェ、ロー。貴方は人魚に会ったことがある?」
「人魚は一度もねェな。昔、半魚人のガキと一緒に暮らしたことはあるが・・・」
「知っていると思うけど、この島では魚人類は差別や奴隷の対象・・・酷い迫害を受けてきた」
「・・・?」
クレイオがなぜこんな話を始めたのかは分からないが、ローは重ねた腕の上に顎を乗せ、黙って耳を傾ける。
「だけどある時、酷い仕打ちをした種族である人間に、恋をした人魚がいた」
度重なる暴力に傷つき、心を失っていた人魚。
ある日、一人の人間が現れ、その人魚を苦しみから解放した。
「だけど二人は結ばれることは無かった。人間が生きることができるのは陸の上だけ、人魚が生きることができるのは海の中だけ・・・当然よね」
まるで、貴方と私のよう───
「人魚はその人間にこう約束したそうよ」
二本の足を持つ君よ、どうか忘れないで。
君がもし海の魔物に襲われたら、私は津波よりも早く駆け付けて君を助けよう。
君がもし海の上で道標を失ったら、私は千の泡になって君の行く道を指し示そう。
愛する君よ、どうか忘れないで。
どこの海にいても、私の愛は君とともにあることを。
クレイオの話を静かに聞いていたローの表情が、いつしか変わっていた。
「それは・・・いったいどこで・・・聞いた話だ?」
「この島よ」
「・・・・・・・・・・・・」
それは偶然と呼ぶべきか、それとも奇遇と呼ぶべきか。
ローはこれによく似た話を聞いたことがあった。
こことはまったく別の場所で───