第6章 真珠を量る女(ロー)
その日。
夜空に浮かぶ月は針のように細かった。
普段なら月光を浴びて白く光るシャボン玉も、かろうじてその姿を反射しているだけ。
不吉な未来の暗示か、シャボンディ諸島はいつもより暗い夜を迎えていた。
プルプルプルプル・・・
プルプルプルプル・・・・・・
誰もいない両替商の店に、電伝虫の呼び出し音が響く。
プルプルプルプル・・・
プルプルプルプル・・・・・・
電伝虫がかかってくることを予想していたのか。
店のドアの鍵が回り、キーッと音をたてながらゆっくりと扉が開いた。
プルプルプルプル・・・ガチャッ
受話器を取ったのは、この店の主人。
「もしもし」
相手の声を聞いた主人の口元に笑みが浮かんだ。
「はい、クレイオです。お久しぶりです」
棚がところ狭しと並んでいる両替商。
明かりをつけていないせいか、窓から差し込む細い月の光に、お宝達がおぼろげに浮き上がって見える。
「私、疲れた声をしていますか? いえ、大丈夫です」
相手は察しの良い人間なのだろう。
今日初めて男に抱かれたことを悟られないよう、慎重に言葉を選ぶ。
「今月も質の良い宝石が入りました。はい・・・ありがとうございます」
月に一度、必ずかかってくる電伝虫はいつもならここで終わる。
だがこの日はもう一つ、相手には用件があった。
「“最悪の世代”・・・仰る通り、ほとんどがシャボンディ諸島に集まっているようです」
頻繁に新聞を賑わす、海賊のルーキー達。
「・・・・・・」
相手がその一人の名前を口にした瞬間、彼女は静かに瞳を揺らした。
「トラファルガー・ローですか?」
“死の外科医”の異名を持つ、ハートの海賊団船長。
「彼なら───」
すると、電伝虫が高笑いをした。
その笑い声は、聞く人が聞けば恐怖のあまり凍り付くだろう。
しかし、受話器を握る彼女は、愛おしそうに微笑んでいた。
「はい・・・おやすみなさい───“若様”」
電伝虫の横に置いてある天秤。
この店の象徴でもあり、クレイオが大切にしている商売道具には・・・
高らかに笑う“スマイル”の髑髏が彫りこまれていた。