第6章 真珠を量る女(ロー)
これほど美しい皮膚に、彼女はどのような思いで針を刺していったのだろうか。
長い年月がかかっただろう。
強い痛みに耐えなければならなかっただろう。
精神面での葛藤もあったはず。
それでも彫り師としての道を歩もうとしたのかと考えると、胸が締め付けられるような想いがした。
「・・・・・・・・・・・・・・」
ローの背中では今、彫ったばかりの海賊旗が赤く浮き上がっている。
大切な人の最期の顔を模したそれは、ローにとってとても意味のある絵。
まだ完成していないが、クレイオは6代目ホリヨシとして文句のつけようがない仕事をしている。
だがそれは、この滑らかで白い肌を犠牲にして得た技術だったのか・・・
「・・・痛ェな・・・」
背中の刺青から血が滲み、ズキズキと痛む。
まるで、自分の海賊旗に込める想い以上の何かが、ずっしりと重たくのしかかっているようだ。
堪らずにうなじから第4胸椎あたりまで舌を這わせると、クレイオはくすぐったそうに身をよじりながら呟いた。
「さすがの貴方もこの刺青には萎えるのね」
背中を愛撫したからそう思ったのだろう。
ローは苦しそうに眉間にシワを寄せると、その唇を塞ぐようにキスをした。
「違う・・・“敬意”を払っている」
「敬意?」
「ホリヨシという彫り師と・・・クレイオという女の誇り高さにだ」
ホリヨシに刺青を彫ってもらえること。
クレイオの身体に残る、真っ白な肌に触れられること。
そのことに対して敬意を払う。
「いつかお前に弟子ができて、そいつが7代目を襲名する時、この背中に刺青を彫らせるんだろ」
作業場の一番高いところに飾っている額に入った、5代目の皮膚のように。
「お前らホリヨシは・・・狂ってるな」
だが、その狂気があったからこそ、歴史ある伝統と技術が守られてきたのも事実だった。