第6章 真珠を量る女(ロー)
「それにこの島には刺青の他にもう一つ、興味あるものがある。それを見物するまでは出航しないつもりだ」
「興味・・・?」
シャチが首を傾げると、ローは二ヤリと冷酷な笑みを浮かべた。
「月に一度、ヒューマンショップで開かれる人間オークション」
その瞬間、ローと仲間達の会話の邪魔にならないよう、少し離れた所で針を消毒していたクレイオの手がピクリと動いた。
「人間オークションって・・・まさか、人間を売り買いするんですか?」
「ああ。“奴隷”として、あらゆる種族が売りに出されるらしい」
「まさか買うつもりじゃないでしょうね、キャプテン」
「・・・・・・・・・・・・」
その氷のように冷たい笑顔は、いったい何を意味しているのか。
シャチは背筋がゾクリとしたが、ペンギンは表情を変えずに黙っている。
そしてクレイオは、そんなローの横顔に静かな瞳を向けていた。
結局、人間オークションが開かれる日まで出発するつもりは無いと知ったシャチとペンギンは、そのまま船の様子を調べに行った。
ローも続きを彫ってもらおうと再び布団に横になったが、クレイオは顔を背けて近づこうともしない。
「・・・どうした」
「・・・・・・・・・・・・」
それまでと空気が違うことを悟ったのか、ローはクレイオの方を振り返り、怪訝そうに眉をひそめた。
「貴方・・・人間オークションで、奴隷を買うつもりなの?」
「あ?」
「もしそうなら今すぐ出て行って。奴隷を買うような人間に刺青を彫るつもりはない」
13年前、フィッシャー・タイガーが解放した奴隷達を本当の意味で“自由”にするため、先代ホリヨシは死刑を覚悟で天竜人の紋章を潰していった。
彼の技術と精神を受け継いだ自分が、奴隷を買おうとしている人間にその技術を施すわけにはいかない。