第6章 真珠を量る女(ロー)
「マリージョアからほど近いこの島に、大量の奴隷達が逃げてきた」
見たこともない数の海兵がシャボンディ諸島を埋め尽くし、烙印を目印に奴隷達を捕らえ、抵抗すれば殺していた。
「自由になったはずなのに・・・みんな、絶望的な目をしていた。烙印がある限り奴隷のまま・・・すると、父は彼らの前でこう言った」
“拙者は5代目ホリヨシと申す!!! お主らの過去を消し、人間としての名誉と自由を取り戻してやろう!!!”
作務衣を纏い、ノミを持って叫んだ父は、死を覚悟していた。
天竜人の紋章を穢すのは、“重罪”───
「父は、烙印が見えなくなるように彼らの望む絵柄を彫っていった・・・故郷に咲く花、愛する人の似顔絵、その人が“誇り”に思うもので、奴隷の証を覆い隠した」
その技術は、もはや語るまでもないだろう。
数えきれない程の人間の刺青を彫り終えた後、父の手は墨に染まり、筋肉が硬直して動かなくなっていた。
「鬼神のごとく針を突き刺す父を見て思った。刺青というのは身体に墨を入れるだけの行為ではない。生きようとする者の誇りを刻む行為なのだと」
それを信念とするホリヨシの血は、絶やしてはいけない。
私が受け継いでいかなければ。
「その日から私はノミを持った」
父から技術を学び、信念を継承し、ホリヨシの名を守っていく。
「たとえば、病気で乳房を切除しなければいけない女性がいて・・・貴方達、医者は患者の命を守るために乳房を切るでしょう。でも、彫り師は違う」
腫瘍を取り除いたあとの傷を隠すように、美しい絵柄を彫る。
再建した乳房が本物と変わらず見えるよう、乳輪の絵柄を彫る。
「私達は、命が助かった後の人生が誇れるものになるよう、患者の身体に針を刺すの」
そういう意味では、私と貴方は対極にありながら、互いに手を取り合うべき存在かもね。
そう言って、微笑んだ。