第26章 揺れる心〜愛の逃避行、無垢なる笑顔と恋のlabyrinth〜
あぁ、もういっそ灰になってしまいたい。
ネガティブを通り越し、自殺願望まで発令して逃げようとする自分が嫌いで嫌いで仕方ない。
そんなオレに今あるのは、嘘をついてでもこの涙を止めてあげたいという自己満足と偽善しかない。
「...いい子にしてたら、きて、くれる?」
大きな目からポロポロ出てくるしずく、透明で純粋でオレにとっては即効性のある猛毒だ。
毒を以て毒を制すなんてことわざ聞いて呆れる、心に含んだ瞬間に即効でボロボロにしてしまう毒になんの毒がきくっていうの?
「来て、来てくれるさ」
そっとすくった透明な毒は、自分の指を溶かしていくみたい、指先からドロドロと溶けだして、いっそ流れてしまえばいい。
温かくて、優しい毒は深く深く浸透してそれなしには生きてはいけなくなる。
オレにとって毒よりも強力で麻薬よりももっともっとタチが悪い。
『愛情』というなの猛毒。
「じゃあ、じゃあ待ってる...」
こくんこくんと頷いて、服の袖で一生懸命涙をふいて目を腫らしながら笑う。
ねぇ、お願いだからそんな顔をしないで、胸が壊れそうになる...。
ズキンと痛くなる胸をおさえて、下を向く。
物語のチャシャ猫がアリスの前から姿を消したり現れたりしてしまうのは、アリスが綺麗すぎて自分にとって触れてはいけないと思ってしまったからかもしれない。それなのに、それでもアリスといたくて忘れて欲しくなくてコソコソ後ろをついてく。
ぼんやりとつまらない空想にひたれば、かたんと目の前から小さな音。
「片付けてくるね?」
カラになったカップと、原型を留めていないカップを乗せたトレーを小さな手が攫う。
中身の入ったコーヒーを置き去りにして...。
すっかり忘れていたホットコーヒーは冷めてしまった。冷たくなったコーヒーを一気に飲み干すと、苦味がじわっと舌に広がってく。
甘さなんてかけらもないコーヒーが、さっき食べたアイスの甘さを流す。
こんなふうに気持ちも流せてしまえたら、こんなに悩んだりしないのに...。