第26章 揺れる心〜愛の逃避行、無垢なる笑顔と恋のlabyrinth〜
ドキドキと心臓が音を鳴らす。
ただの、間接キス...だし...。
まして相手は、子どもだし...。
それなのに、それ以上の事だってしてるはずなのに、胸が苦しいくらい...鳴る。
「溶けちゃうよ?」
サングラスごしで、鈴音が笑う。
テーブルから身を乗り出して、パクリとアイスを口の中へ入れる。
すうっと溶けていくアイス、柔らかいミルクの味の後に紅茶のいい香りとほんのり苦味が口の中で広がる。
自分の心の中を丁度表した、そんな感じ。
優しい気持ちと、やるせない気持ちを混ぜて合わせたような。
「ねぇねぇ?おいしい?」
目を細めて笑う。
サングラスが邪魔で、でもこれをとることはできない。永遠に届かない壁かなにかみたいな。
「...とってもデリシャスだ」
「本当に!?じゃあ私も食べよー!」
あれだけ妄想しといて今さらなんだけど、鈴音はアイスに手をつけてない。自分が食べる前にオレにくれたらしい。
可愛らしい口に運ばれていく亜麻色のアイス。
口に含んだ瞬間、ほっぺに手を当てて幸せそうにする。
「...美味しい?」
聴かなくてもわかるけど、それでもついそう言ってしまう。
「とっても!」
キラキラと眩しい笑顔、サングラスごしに目を細めて思う。この子が愛おしいと、そう...。
ずっとこの笑顔を見ていられたらって、そんな馬鹿みたいに小さな願い事。
まあるい紅芋のアイスから、またひと口すくいとる。
「...はい、もうひと口」
「ありがとう!」
もう言葉で伝えるには胸がいっぱいで、温かくてそれでいて苦しい感情。
他人の幸せそうにしてる顔を見て、自分も幸せになるなんて思ってもみなかった。
ましてやそれが、自分とは違う種族。
人間にそんな感情。
鈴音と出会った日から、愛しいを知った。
もう遠い日の思い出だったけど、今目の前にある笑顔がもう1度それを思い出させる。
でも、それと同時に...この想いを抱くのはオレだけじゃないって思う...。