第26章 揺れる心〜愛の逃避行、無垢なる笑顔と恋のlabyrinth〜
歩き出したものの、さてどこに行こう?
マヌケでアホなクソ松は多分まだ水族館で寝てるだろうし、鉢合わせしたらまずい。
鈴音の目の前で手を赤く染める事はできない。
いなかったら?
迷わず死刑ですけど、ひひっ...。
本気と書いてマジな事を考えていると、鈴音の歩幅が少し遅くなった。
その違和感に気づいて、鈴音の目線の先をみればああなるほどと納得する。
「...レディ行こう」
とりあえずレディってつけたらなんとか誤魔化せるよね。たぶん...。
すたすたと歩こうとしたけど、そういえばオレの歩幅じゃ歩きずらいかと思って手を離す。
そもそも手を繋ぐとかあんまり慣れてないし、妙に照れくさいし...。
「....やだ!」
小さな両手がオレの手をぎゅうっと握りしめた。
あまりに突然の事だったので、ぎょっとして鈴音を見つめる。
「あ、ごめんなさい...」
するりと離された手は少し赤くなっていて、ちょっとびっくりした。
「どっか行っちゃうとおもって...」
不安そうな顔でオレを見上げて鈴音はそういう。
何時ぞやのやり取りを思い出せば、寂しげな風が舞い込む。
泣かないで、頼むから...。
「どこにも行かない、ほら」
慣れない手をもう1度差出して、顔を前に向ける。
小さい時もオレは鈴音と手をつなぐのをした事がなかった。
一方的に後ろを付け回されていた事を思い出す。
まぁ、本当はちゃんとついてこれてるか何回も後ろを振り返ってたりしたけど...。
勇気を出して控えめに差し出した手に、ほんわりと熱が加わる。ぎゅうっと強めに握られて少し痛いけど、痛いぐらいが丁度いい。
ここに居るって、幻じゃないってそう思えるから...。
小さく口角を上げてゆっくりと鈴音が見つめていた先を目指す。