第26章 揺れる心〜愛の逃避行、無垢なる笑顔と恋のlabyrinth〜
「...鈴音は、優しい子だね」
頭を撫でながら、ずれたサングラスをさり気なく戻す。今の顔をあんまり見られたくない。
褒めてあげたいという気持ちと、羨ましいと思ってしまう心が混ざり合う。
本当はめいっぱい褒めて、自分の事だったなら抱き締めてありがとうと心から言ってあげたいのにそれを伝える事ができるのはクソ松だ。
どうしてこの姿で会っちゃったんだろうなんて後悔がオレを襲う。
他の奴に見せたくないとか、鈴音の優しさを渡したくないだとかそんなふうに考えるオレは本当にただの粗大ごみ。
このまま、鈴音を攫ってしまったら独り占めできる?
怖い事を考えてしまうほど想いが強すぎて、それを隠すのに必死で馬鹿の極みだよね...。
「鈴音、行こう?」
手を差し出してみれば、ニコッと笑う。
この笑顔はオレに向けられたものじゃないのに、それでもオレの口元は微かに緩くなる。
少しくらいいいよな、クソ松?
散々鈴音を独り占めしたんだ、それをお前はオレに見せつけた。
オレができない事をアイツはしたんだ。
オレの前で、クソ松のくせに鈴音と楽しそうに笑って...。
勝手についてきて見て嫉妬するなんて、ストーカーかなんかだよね。わかってる、そんなのはわかってる。
でも...。
「カラちゃん?」
「あぁ、行こうかレディ?」
自分が最低で最悪なのなんて、ちゃんとわかってる。でもそんなクズになったら鈴音と一緒にいれるんなら、オレはクズにだって1番嫌いな奴にだってなってやる。
クソ松になってでも、今の鈴音と一緒にいたい。
「....カラちゃん」
「え、な、なんだいレディ?」
悪い事を考えてたら名前を呼ばれて、ハッ我にかえれば心配そうな顔した鈴音がこちらをじっと見つめる。
「...ううん、なんでもない」
繋がれた小さな手が、オレの手を握りしめる力が強くなった気がした。