第26章 揺れる心〜愛の逃避行、無垢なる笑顔と恋のlabyrinth〜
とりあえず、鈴音のハンカチは使えないからクソ松柄のハンカチで冷や汗をふく。
使えたらそれでいいかもしれないけど、このハンカチ地味に精神にくる。
気を取り直して、鈴音の目線の高さまでしゃがんだ。
「レディ、1人で遠くに行っちゃダメだろ?迷子にでもなったらどうするんだ?」
鈴音を放ったらかして寝たクソ松が半分以上悪いけど、でも1人でどこかへ行くのはいただけない。
「ごめんなさい...」
しょんぼりとした顔してオレを見る。
久々の再会で叱らなきゃならないなんて正直嫌だけど、鈴音に何かあったらと思うと気が気じゃない。
「とっても心配したんだぞ?お願いだから...どっかに行ったりしないで...」
そっと頬にさわる、柔らかい感触がオレの肌に伝わる。何かあったらと思うと怖くてたまらない。
「本当にごめんなさい、でも...あのね...あの...ね」
うるっと泣きそうになりながらじいっとオレを見つめる。怒られているからと、何かを言いたげで言い出せないでいる鈴音にできるだけ優しく話す。
「どうしてこんな事したの?」
「あのね、あの、これ...を...」
大事に大事に抱えていたジュースを鈴音はオレに差し出す。
「これ、オレに?」
こくんと頷く鈴音、そっと手に取ったジュースはミルクティーだ。ほんわりと暖かいそれをじっと見つめる。
「カラちゃんね、今日いっぱいいっぱい遊んでくれて、それで寝ちゃってたから疲れてるんだろうなってなってね?電車の時にミルクティ半分こしたから、1人でどこか行っちゃいけないのわかってたけど...」
たどたどしい話し方、伝えたい事を一生懸命並べてそれがあんまりにも健気でミルクティみたいに温かい。
「そうか、ク...いや、オレの事を心配してくれたんだな?」
「うん」
...本当、これがクソ松に向けられた感情じゃなかったらどれだけいい事か。