第26章 揺れる心〜愛の逃避行、無垢なる笑顔と恋のlabyrinth〜
「あースッキリした」
便器に座ってふーって言ってから横を見てみれば、紙がない事に気づく。そういえば紙がない事をさっきまでネタにしてたのに、なんで忘れてたんだろう。
重要な事を忘れてしまうほどに強い便意だったから?
とりあえず便器に座ったまま水をジャーっと流す。
出戻ったトイレの場所をもっと確認しときゃよかっただなんて、考えたって時間が元に戻るわけもなく...。
「こうなったら横にノックするか...。
できない、できるわけない!そんなんできてんならひきヴァンパイアなんてやってない!すでに妖友もできている!便意にも勝っている!」
あーっなんて頭を掻きむしってみれば、トイレの荷物置きに置いておいた紙袋が見える。
「もういっそ、こいつでふくか」
心の声を代弁して「にゃーお」と一声、たしかにパンツを汚すくらいならばいっそ恥や外聞を捨てる選択肢一択しかない。
悩んでる暇なんてないし、一刻も早く尻をふきたい。
まって...。
紙袋を見つめてたらピンときた策。
よくよく考えてみれば、トイレに落ちたのはマントだけなんだし、服は無事じゃないかって...。
「ふひひ、これぞ芥川の蜘蛛の糸」
地獄に仏とはこの事、尻の問題はまだ解決してないけどとりあえず服の問題はなんとかなりそうだ。
そうと決まったら気は進まないけど、紙袋を破るべく手を伸ばす。
「.........あれ?」
手を伸ばした先にあったはずのものが無い。
「え?なんで?」
ぱちくりと2度瞬きしてみるけれど、やっぱり見当たらない。
あまりの出来事にオレは固まった。
え?なにこれ?頭の中が追いつかないんだけど、え?
...袋が消えた。
たった今目の前にあった袋がパッと消えた。
どこにもない、あるはずなのに見当たらない。
......。
ふっ、ふふっふ...。
ふひひひ...。
「厄日だ。今日はもう死のう」
エスパーにゃんこの声が遠く遠く聞こえた気がした。