第1章 伝説の始まり
それから数日、仄が彼岸花に一方的に話しかける日が続いた。
「今日の授業で先生がね……」
「今日白夜ったら……」
「今度流魂街に……」
聞こえてくる話はいつも自分の知らない話や自分以外の名前ばかり。
仄のことを何より大切に守ってきた自分からすればそれはあまりに酷な話だった。
『内に秘めたこのモヤモヤしたドス黒い感情のせいで大切なあの子を傷つけるのではないか』なんてことを彼なりに考えた結果身動きが取れず、何も返すことが出来なくなっていた。
そんな日が2週間ほど続いたある日、ついに彼女に限界が来た。
「ねぇ、彼岸花……答えてよ。 何をそんなに怒っているの? 私、わかんないよ………ねぇ、彼岸花……私の事嫌いになったの?」
今にも消えてしまいそうなその声に目を開ける。
不安と恐怖に歪んだ表情で自分を見つめる少女の瞳に自分のしたことを後悔した。
『僕はこの子になんて顔をさせてしまっているんだ。』
今すぐに抱きしめてあげたいのに、いつの間にか彼女からの霊力の供給を無意識に切ってしまっていたようで上手く具現化できない。
「ねぇ、もしかして私もう要らない? 嫌いになっちゃった? 私、もう必要ない?」
『そんなことない!! 僕が意地を張りすぎたんだ!』
どんなに叫んでも彼女の耳に届かない言葉。
「答えてくれないんだ、ね……。
そっか、ならもう私
要らないね……。」
そう言って彼女は自分の胸に刀を突き立てた、、、、。