第1章 伝説の始まり
「私は緋真といいます。少し前からこの街に来ていて、勝手もわからない矢先にあんな事になってしまって……助かりました。本当にありがとうございました。」
目の前で頭を下げる彼女に慌てて声をかける。
「あ、いや…私が勝手にしちゃった事だからそんなっ!!」
あたふたと狼狽える私を見た彼女はぽかーんとした顔をしたかと思うとふっと笑顔になった。
「ふふっ、仄さんが助けてくれた時、男の人かと思ったんですよ? けど、近くで見るととっても綺麗で…だから髪が切られた時、なんて事をって気が動転しちゃって……ホントにごめんなさい。」
背後に立つ緋真の優しい声の合間にチョキチョキとリズミカルな音が簡素な部屋に響く。
「本当に綺麗な髪…」
「別に大丈夫だって。 正直、死神になる前に1度切っておこうと思ってたからちょうど良かったよ。
そう言えば、ここには1人で住んでるの?」
私の言葉にピタリと彼女の手が止まった。
「っ………。」
何かを耐えるような声が聞こえた。
……ワケありか。
「別に言わなくてもいいよー。この街にいる奴らなんてみんな何かしらのワケありだしねー。だから……」
私は振り返って俯く緋真さんの涙を指先で拭った。
「……顔を上げな?」
「……っ、わ、わたし。」
「無理に言わなくてもいいって。私の中の緋真さんは『髪結所で働いてる優しいキレイな人』それでいいじゃん」
「っ……うぅ……仄さんっ……。」
「話したくなったらで良いよ。」
「………はい。」
「あ、そうだ。髪型なんだけど……」
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「いやー、買い物も付き合ってもらえて助かったよー。
正直、この格好だと目立って仕方なかったんだよねぇ。」
「ふふふっ、お役に立ててよかったです。」
籠を抱えた私のとなりで、にこやかに笑う緋真さんは本当に綺麗ですれ違う男達が立ち止まるほどだった。
流魂街の入口で二人で立ち止まり、なんとも言えない空気が流れた。
「またここに来たら緋真さんの店寄っていいかな? またお買い物付き合ってほしいなぁ……なんて。」
こんな事言うの初めてで自分の声が震えるのが分かる。
「……こちらこそ、お友達になって下さい!!」
「へ?? いいの?」
私なんかが……お友達になっていいの??