第64章 original~如何にして個とするか~
「そう言えばフィードバックしてもらってないですね。」
「視線誘導については合格点では無いけれど、副隊長レベルなら誤魔化せるくらいにはなったと思う。あぁそれと、ポインティちゃんならもっと鬼道の技の威力上げられるで。低番号のでも高番号くらいの威力を出せるはずや。断空作ってくれるか?」
「はい、出しました。」
そう言いながら指先で白雷を出した平子隊長。しかしその白雷は私の知るものの何十倍の威力があり、私の作った断空が揺らぐほどのものだった。
「やり方はわかるやろ?鬼道の威力の底上げも可能っちゅうことや。」
「なるほど、九十番台とかぶっぱなしがちなので、勉強になります。」
「必殺技を安売りすなて。虚化の方は俺から伝えることはもう無いな。」
「やはりあの仮面のままで戦うのは消耗するんです。たまにで良いのでお手合わせして頂けるの助かります。」
「人目につかん所ならかまへんよ。」
隊長という立場上、虚化を公衆の面前で行うのは良くないのか?
「私も虚化はあんまりしない方がいいのかな。」
「俺たちは被害者やったとはいえ、死神を恨みながら現世で潜んでいた。組織からしたら反乱因子も同然。戻ると決めた以上、信頼を得るためにはせっかくの力を封じる必要もあるんや。隊長としての誇りを示すためにな。虚は死神にとっては忌むべきモノなわけやから、この羽織を背負う間は、な。」
元は忌むべき力であった以上、何も返せなかった。
「ポインティちゃんがその力に誇りを持っているんなら、気にせんと使っていき。これは仮面の軍勢の話や。……今んとこ伝えなあかんのはそんだけや。」
「平子さん、ほんとうに指導が上手いですね。」
「なんや、惚れたんか?」
「惚れてはいませんけど、なんだろ、戦っているときの、平子さんの獣を狩るような、目付きにドキドキしましたよ。虎みたいでした。」
『虎、かぁ。』と呟いて、平子さんは歩みを止めた。
「山桜 霞の間より ほのかにも」
その和歌を知っていた。
「見てし人こそ恋しかりけれ」
そう返すと、平子さんは表情を変えずに歩き始めた。
「古今和歌集ですね?……えっ、たしかにチラッと前髪から見える目が虎みたいでドキドキしましたけど、恋とはまた違いますよ?」
「まーた振られたな。」