第64章 original~如何にして個とするか~
あれから2週間ほど経ち、業務に戻っていた。
「桃から聞いたで〜喜助と喧嘩したんやろ?」
うわっと飛び上がる。
隊首室の窓を換気のために開けた途端。逆さまの平子さんが顔を覗かせて、窓から侵入してきた。
「女の子の部屋は断りなしで入っちゃダメなんですよ」
「でも、王子様は決まって窓から助けに来るもんやろ?」
言い終わると「邪魔するで〜」と言って遠慮なく侵入してきた。
「邪魔するんやったら帰って〜」
「あいよ〜……やあらへんねん!」
そういう平子さんは満足そうな様子。
「新喜劇ネタ通じるん嬉しいわ〜」
「で、何しに来たんですか?」
この人、100年前もこうやっていろんな隊舎歩いてたっけ。
「現世のもんばっか置いてあるな〜ズルない?」
ボールペンをカチャカチャしたかと思えばペン回し。
「これ、新機種のタブレットやん。使いやすい?俺も替えようかな。」
「平子さ〜ん?」
ドカッとソファに座った。と思いきや、棚にある紅茶を見てそちらを覗き込む。
「珈琲に紅茶、品揃えすんごいな。」
「フレーバーティが好きなんですよ。珈琲は豆もインスタントもバリスタもありますよ」
「現世の味に恋しなったら、ここ来ればええんやな」
紙のコップを取り出して慣れた手つきでバリスタを使う。
「やりますやります」
「ええでええで、ポインティちゃんは何飲む?ちょっとお茶しよや。」
「そしたら、バリスタのカフェオレで」
自分のマグカップを差し出した。
「ご当地お菓子のミレイビスケット、開けましょうか。」
「おっ、知ってるで、これ素朴な味やけど止まらんくなるやつや」
突然始まった平子さんとのお茶会。何しに来たんだろう。
「ポインティちゃんが隊長かぁ〜。よーく考えたら感慨深いな。」
「何を今更。この前一緒に任務についたじゃないですか。」
「いや〜せやねんけどな。冷静に考えたら改めて凄いなぁと。」
「新設の隊が無ければ、今でも特務隊でしたよ。」
「そうか?100年前に霊術院通ってたら、俺の後釜として育てたやろうし、そう思う隊長格はおったんちゃう?」
「五番隊ですか〜?」
「自分、五番隊がいちばん合ってるやろ。鬼道得意やし。」
「平子さんが使ってるのあんまり見たことないですけど。」
「鬼力回復室の五番隊やで。俺かて使えるわ。……そうそう」
