第63章 original〜尸魂界西梢局篇 散〜
「隊長のような霊威数、つまり濃度の高い魂魄ばかり集めていたのならば可能性もあったかもしれませんけど。それはもはやオリジナルの魂魄ではなくて、新しい魂魄です。もしくは因幡影狼佐のような技術があれば、ですね。」
「つまりはそういう事や。普通の人間には無理なこっちゃ。……普通の人間には、こんな魂を抜くなんてこともできん芸当のはずなんやけどな?」
「ナンシーは何か心当たりある?」
「あたしたちは黒魔術を行うサバトの取締を行ってる。悪魔、つまりダークドラゴンの使役を目的とするサバトが多いからだ。黒魔女や黒魔術師などは、まさにあの血の池のように、薬品や薬草、生物を混ぜたり煮たりして"薬"を作る。大抵はドラゴンに贄となった動植物の陰の気を吸わせる目的のものでそれ以外に効力はない。……」
ナンシーは何か言おうとして口を噤んだ。そして意を決して口を開いた。
「リバース・ロンドンの大図書館に稀覯本となっている魔導書がある。あれは人間が生み出した"本物"の魔術が全て記録されている。霊的存在への干渉、魂を肉体から剥がす方法などが書かれていると聞いた。」
ナンシーがポインティちゃんの肉体と魂魄を交互に見た。
「見る限り、東では常識の事も書いていそうだな。しかし、現世を生きる我々は許可なくそれを見ることも、その魔術を使用することも許されない。たとえ魔法使用を許可された私たち魔女でも。」
「じゃあ、奇跡的にその魔術を成功させた、ってこと?」
「それはない。魔術に必要な材料が少しでも異なれば力は発揮できないらしい。それに扱うものの素質も必要だ。言霊を扱える者でないと……」
「言に宿る魂。死神における鬼道がそれですね。儀式の最中、皆さん歌っていらっしゃいました。あれが言霊でしょう。」
「そうか。ならば尚更たまたまその魔術にたどり着いたとは言えない。」
「ほんならつまり、その魔導書を見たもんがおるってことちゃう?」
「……そうかもしれない。」
「まぁええわ。案外その辺おるやろうしな。ポインティちゃん、他に伝えたいことは?」
「魂魄消失は恐らくここで起こったことだと思います。ここで魂魄を溶かされたら魂は導かれないでしょうから。」
「っちゅうことや。ナンシー。悪いけど上に連絡とってくれんか?」