第62章 original~尸魂界西梢局篇 贄~
「これは精神世界?」
全面が波打つ暗い世界に来ていた。感覚で自分の精神世界だとわかったが、斬魄刀たちの世界とは少し違う。
「貴女の魂魄の外壁が割れて、内部にも破損が見られる」
精神世界に人の影があった。
「あなたは、」
「私は貴女自身よ。」
声に聞き覚えがある。彼女は私の中の蓮美だ。
「私の魂魄はそのまま貴女のものとなった。つまり、貴女は私自身。私は貴女。魂魄上はね。もうそんなこと言わなくても貴女にはわかってるはずよ。」
あの大虚の体内で見た蓮実の険しい顔ではないのだけれど、私はこんなきつい目をしていたのか?
「私と貴方が同一だと言うなら、精神世界とはいえ、こうして対峙してることはおかしいわね。」
「私は貴方の魂魄の持つ『記憶』と言うべきかしら。」
「魂魄の記憶」
蓮美の記憶は全て魂魄の記憶からもたらされるもの。彼女はそれを自称する。
「魂魄が壊されたことにより、封じられている魂魄の記憶が漏れ出しはじめた。」
「それってどうなるの」
「蓮美の人格と今の人格が乖離してしまう。最悪の場合はどちらかが消滅する。」
「えっ」
「たかだか十数年の貴方の記憶が、何百年もの魂魄の記憶に勝てるはずがない。だから消えるのは貴方。貴方という人格は保てなくなる。いいえ、このままでは魂魄自体も溶けて消えてしまって、無になるわ。」
「人格云々言ってる場合じゃないやん」
「一度霊子になるまで分解された魂魄を再構築するということは新しい魂魄を作り出すこと。これは現世への転生の原理と同じよ。私の魂魄が分解されたのを配列も質量もなにもかも違わず構築して貴女の魂魄が生まれた。だから私と貴女は魂魄上、同一である。それは崩玉による奇跡。天文学的数字よりも遥かに有り得ない話なのよ。ここで全ての魂魄が溶けだしてしまえば、例え再構築できてもそれは貴女ではない。」
「じゃあこのままだと」
「15分後には霊子となる。」
絶望的状況、死ぬっていっても肉体を無くすんじゃなくて魂魄が消えるって、それは、完全なる死。どうしようと頭を働かせようとした。
「私は蓮美の人格ともいうべき存在だからかしら……あの人を悲しませることはしたくない。」
「どうするの?」
「魂魄の最奥には彼が隠した崩玉がある。」