第62章 original~尸魂界西梢局篇 贄~
私を抱えてきた男が後ろを振り向いた。軍手を填めているのが分かったが、その後ろにあったのが鉄の棒だった。
嫌な予感がする。頼む外れてくれ、嫌だ嫌だと顔を横に振った。
「右肩と右の太腿に刺すか。お前ら抑えとけよ。」
鉄の棒の先端は鋭く尖っているどころか赤くなっている。いやいや、刀傷なんかじゃすまんぞ、と精一杯の抵抗をした。しかし虚しくも右の肩に刺さった。声にならない叫びを上げたような気がする。ジュ、と棒が冷える音が耳のすぐ傍でしている。肩の内部では刺さった周辺の組織が焼かれている感覚と、そこに血が入り染み込んでくる感覚とで視界がチカチカとした。その瞬間に右の太腿も同じように刺された。痛いとかじゃない、本当に死んでしまう、恐怖も相まって本気でそう思った。暫く痛みで暴れたが、数分経てば意識が朦朧としてきて、口から浅い呼吸を繰り返し痛みを逃がす作業をするだけになった。動けばまだ熱を持つ棒が揺れる。上体が起こせず、どうにもならないので、私は助けが来るのを信じるしか無かった。
「大人しくなったみたいですよー。おばば、どうする?良い時間になってるけど。」
「その汚い手を洗ってきな。ローブも。」
「血塗れでいやだったんだよね。」
「だってこの血、私達が提供した血とか獣とか鳥の血でしょ?嫌だー病気になっちゃうよ。」
はっは、まじかよ。何回か飲んだわ。しかも傷口開いてる時点でもうなんかしらの病原菌入ってるわ。
「えっ、あの子英語わかるんだっけ?」
「ちょっとわかるみたいだよ。」
「やだ、怖い顔してる〜」
私のことを抑えてた人間は退室したが他の人間は台に色んなものを乗せたりと、なにかの準備をしている。棺入ったミイラの蓋が開かれていく。これからどうなるのかわならない。何をしたらいいかも分からない。
頭上のステンドグラスにはこの国の多くの国民が信仰し、神と崇められている男性の絵が描かれている。彼に縋っていたら、助けは来るのだろうか。
死んだらどうなる?尸魂界へ送られる。そっか、私は肉体が生命活動を停止するだけだから、魂魄が無事なら常に死神化した状態になるだけ。一瞬ほっとしたがだからといってこんな所で死ぬなんて嫌だわ。