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【BLEACH】

第62章 original~尸魂界西梢局篇 贄~


例えるなら鉛のような重く黒い霧が空間内に広がっているような、勿論それは良いものでは無い。邪な気である。それに空気、そう嗅覚も奥に入るにつれてだんだん嗅いだことの無い臭いに鼻を曲げそうになった。

直感的についこの間学校でやっていた芥川龍之介の小説『羅生門』の楼内での様子のようだと感じた。

尤も腐乱した臭いが充満している訳では無い。奥の方から空気の流れによってそんな匂いも感じるけれど、それよりも鼻につくのは薬草と化学薬品の臭いと土っぽい臭い。それから繊維の臭い、僅かに獣のような匂いもする。今まで嗅いだことの無い臭い、出来ればここにずっといたくはないと思ったその矢先、視界の端に臭いの発生源だろうと思われるそれを捉えた。

するり、と目隠しが解けたときにみえたもの

数人の持つ蝋燭の光にてらてらの揺れる陰影。堀の深まった部分には光が届かず闇が広がっている。四肢を小さく丸めて壁に安置されたそれは元々生きた人間だったことが想像できぬほどの不気味さを放つ。

ここに来て初めて鳥肌が立ち血の気が引いた。

何体も並ぶミイラ、その不気味さに本能的な怖さを感じた。

イタリアにミイラを安置した有名な寺があるのは知っている。一般公開されているので恐らく観光目的でいけば興味深いということで済むのだろうが、状況が異なりすぎる。日本でもミイラ展など行われているいるが、そんなエンターテインメントの世界じゃない。この空間にはかつて生きていた人間だったもの、死者の成れの果てが並べられている。

ある部屋の前を通った時、色んな思考を止める程の臭いがして噦いた。その部屋を見ると中には乱雑に置かれたミイラもあるが、それよりももっと生臭い、肉の腐ったような臭いと薬品の匂いが充満していた。

先に述べたイタリアの寺院を取り上げた番組を見た時のことを思い出した。女性リポーターがカメラの前で顔を歪めた部屋があった。それは死体の中の水分を取る部屋。きっとこの部屋がそうなんだろう。


これから自分がなにをされるのかわからない。逃げようか、ここで逃げようか。もう少し探るか。逃げたい、その気持ちが強くなるのは私の心が弱いからじゃない。この環境下に置かれたら誰でもそうなるだろう。
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