第62章 original~尸魂界西梢局篇 贄~
稀に自然的に起こる現象。幽体離脱の類だろう。無意識下で起こることが多いため、この場合は霊体の彼の意識を目覚めさせて肉体に戻るように促せばいい。鎖が切れなければ問題ない。
「って英語わからんし!えーっと、Excuse me.」
男性は虚ろな目で私を見た。
「Go to your body!」
こんな英語しか喋られないけど伝わってくれ。
彼は私を見つめるばかりでなんの動きも見せない。
仕方ない。無理やり戻すか。私有地への不法侵入になるので、当たりを見回していると、3軒隣の向かい側からまた胸に鎖が繋がった女性が立っていた。
「なんで?」
これは確率論的におかしい。たしかに稀にはあるし、そういう体質の人もいる。だがこんな偶然が起こるほどの確率ではないのだ。
迷ってる場合ではない。男性が出てきていた大きな窓からそこに続く寝室に横たわる肉体に押し込んだ。抵抗はあったが間もなく肉体と魂魄がひとつになった。
「ーーー辺りで2名の幽体離脱を確認。こちらで対応します。ナンシー、平子さん、リンはーーー通りで待機。打ち合わせましょう。」
鏡を使って全員に連絡後、すぐに女性の方へ向かった。
「Go to your body!」
女性はぼうっとした目で立っているだけ。少し前へと進もうとしては鎖に引っ張られて動けないようでそれを繰り返している。仕方ない、彼女も無理矢理にでも肉体に戻そう。
彼女の手を引っ張った途端、ピンと張っていた鎖がじゃらんと音を立てて切れてしまった。
それはつまり死を意味している。彼女はそれに気付くことなくふらふらと歩き始めた。
彼女についていくか、それとも部屋の中を見に行くかを判断しかねていると、みるみる彼女は遠くへ歩いていく。目的の場所があるのだろうか。
切れた鎖の端を手に取って握って彼女の歩みを止めさせた。今切れたばかりの鎖はあと1分もすれば侵食が始まるだろう。とにかく彼女を連れて、皆と合流しなければ、と。鎖を見た。
「……これ、」
鎖をよく見ると鋭利な何かで切られたような感じがした。間もなく侵食が始まるので記録用写真を撮った。
拡大して見るとやはり。物理的に斬られている。
ということは家の中に斬った犯人がいるのだろうか。