第62章 original~尸魂界西梢局篇 贄~
「……なんだって?間もなく日付が変わるのか。そうか、2件も。わかった、片方は僕が行こう。場所は?」
本部からの連絡でポールは声を荒らげていた。私には流暢すぎる英語である為ほとんど聞き取れなかった。
「済まない、ポインティ。応援要請があって僕が行かなければならなくなった。」
「ドラゴン?」
「それもそうなんだが。ドラゴンが陰の気に染まれば君達のところで言う虚になる。それを意図的に行う奴らがいるんだ。」
「意図的に?」
「そう。悪魔崇拝といえばわかるか?僕たちは人間に害をなさないドラゴンは保護する。だが、あいつらは僕らが殺処理するダークドラゴンを使役しようとするんだ。そして自分の利益のために人に害をもたらす。僕たち聖務隊の仕事は悪魔崇拝や黒魔術の類を行うサバト集団の撲滅。まさに今、仲間が黒魔術の現場を取り押さえたらしい。少し行ってくる。子どもがこの時間にいるのは危険だ。仲間と共にいてもらいなさい。」
「気をつけて。」
大変だなぁと思いながらぽてぽて歩く。
ロンドンの時計台の針は頂点へと向かう今、街はまだ人の気がある。今日は金曜日。日本でいう華金だから比較的人も多いのだろうとは思う。
「たしかに、東洋人は幼く見えるって言うし。警察とかに呼び止められても面倒かな。」
人のいる大通りから外れて裏路地に入る。そこで平子さんを呼ぶかリンを呼ぶか選んでいた。
「ん?」
その時手に持っていた魂魄の異常を感知する機械が僅かに動いた。数値は正常値であるが、針に動きがあった。
気の所為なのかな、と思うほどの僅かなそれを確認すべく、その機械を翳しながら道を歩いた。
昼間にここを通った。中世ヨーロッパ時代から残っているという趣ある建物が並ぶ通りで、住宅や喫茶店や小物店など個人経営の店が並んでいた。夜見ると現代離れしたその街の様子に自分一人タイムスリップしてしまったのかと少し不安になった。
「……!」
人気のない通りに一つ。フラフラと立つ男性の人の影。胸には因果の鎖があり、死んでいるものだということ
いや、違う。
鎖は建物の中から出ている。彼はその場から動かないのではなく、動けないのだ。