第59章 original〜魂魄の底〜
「そう聞くと、まるでアナタのは悪夢だった、みたいッスね。」
「悪夢も悪夢よ。」
「鏡山のリンさんになにかされる夢とか?」
「ちーがーうー。……蓮美が出てきた。」
「蓮美ポインティサンが?」
いつもの声色とは少し違った反応。少し驚きつつも答えた。
「ここは魂魄の奥底で、蓮美以外には侵されない空間だって言ってた。だから出ていけとか、倒せば私に成り変われるとか言って戦いを挑んできた。」
「もうひとりの自分と戦う夢ッスか。」
「うーん。あの蓮美は私じゃない。あれが蓮美だったら私、もう過去の自分ですーなんて言わないわ。嫌だもん、あんなの。私じゃない。」
「よっぽど感じ悪かったようですね。」
「そーなの!独占欲と嫉妬にまみれた女だったね。あれ。……そんなんじゃなかったよね?」
「表には出してなかったのでなんとも?」
「なーにそれ!あれが私だったら、喜助さんが死神になることも夜一さんと仲良くしてることも許さないわ!」
プン!として2階に戻った。私にはまだまだ仕事があるのだ。いつまでも喜助さんと話してられないんですよ〜!
その日の晩に夢を見た。過去の記憶なんだろうってすぐに理解した。
夜一さんの誕生会に呼んでもらった際のこと。まだ夜一さんは死神にも真央霊術院にも通う前で、私は幼かった。本来の誕生会ではなく、三次会くらいの、夜一さんが本当に呼びたい仲のいい人だけを集めた少数のお祝い会で、私もそこにいる人とは知り合いだった。出席者には若き頃のテッサイさん、志波空鶴さんをはじめとした志波家の兄弟、蓬莱家の分家筋の男女数名、喜助さんと私。
はじめは楽しみにしていたのだけれど、誕生日会主賓の夜一さんが美しい着物を着ていて少しときめいた。そして、そうか。この人はお姫様なんだと思った。思えば志波空鶴さんはともかく、蓬莱家の女性も美しい着物を身にまとっていて、急に自分の格好がみずほらしく思えてきた。決して汚い格好ではない。夜一さんがお下がりをくれたり、贈り物をしてくれるので、かなり良いものを着ているのだが、やはり女心ときめくものを身にまとっている人を見ると、自分が劣ってるように思えてきた。