第58章 original〜五月晴れ〜
刀身から水滴がポタポタ落ちていく。
「霊力上がっただけでなんもないのか。もう飽きた、そろそろ取り込まれろよ。」
「灼遁刃流!」
「あっちいな!熱湯じゃねえか!」
皮膚が焼ける音がした。これならいけるのでは?
「灼遁群渦」
熱湯の渦が幾つも宙に浮き、虚の進路を防ぐ。
「くっそ!身がもがれる!……ふざけんなよ、なめんなよ。」
虚が雄叫びを上げた。するとなんだんにもなった腹からいくつもの楕円形に近いものが皮膚を内側から押し始めた。集合体恐怖症ならちょっと無理になるくらいのそれはぐんぐん皮膚を引っ張り、伸ばし、その正体を見せた。
「これは、虚?」
「こいつらは、僕に吸収された虚だよ。」
虚の仮面の部分が腹から出てきた。その数は数えられないほど。腹だけでなく胸や背中、腕や足。首から下が虚の顔で埋められた。
「うっわぁ、気持ち悪」
「さぁて、お前ら、こいつを捉えるんだ。」
身体中から虚の身体が伸びてくる。その数ざっと百はある。
「あんた、身体頑丈そうだし、ちょっとくらい無茶しても一護には届かんでしょうね!風月!風間ノ走!」
一振目で空気や物理的抵抗を無くし、二振り目で真空状態になった空間をジェット機の如き風の刃で対象を切り裂く。
『フタエノキワミ』と勝手に私が呼んでるこの技で、体から伸びてくる虚を消滅させ、元の虚の腹を開くことができた。
「……一護?そう言えばここに一護の顔がない。ということは、呼びかければ出てくるかな?……一護!!一護!聞こえる!」
「ぐっ……はぁ、死神代行はな、今僕の身体の中で寝てるさ。起きやしない。そのまま霊力になる。さぁ、戻ってこい、同志よ!」
そう叫ぶと、切り裂いた時の肉片がぺちゃぺちゃ動き、虚に戻っていく。
「なっ、」
油断していた。肉片が大きな塊となって私の背中にべっとりとついてしまった。
「お前、僕の肉片切り裂いて放置していただろ?それが敗因だ。さぁ!来い!」
肉片に完全に包まれる!
「水月!」
「無駄だ!お前は既に僕の一部だよ!」