第57章 完現術篇 結
「なんじゃ、ポインティを監禁でもするつもりか?」
「しませんよ〜。自分の心の整理がつかなかった、それだけのことッス。周りにもこのイライラが伝わっていたようですからね、謝らないと。」
そう言うと、夜一サンは人の姿に戻った。
「出来ないことはやるもんではない。お主は全く割り切れてないようだからのう。」
「仰る通りッス。」
「蓮美とあの女子を同一と捉える一方、別人とも捉えておる。そうでいて重ねもする。お主はあの子と向かい合う覚悟が足りぬのではないか。」
「彼女にポインティの面影を……面影しかないんスけど、そういうのを見たとき、心が安らぐんス。目の前にいるのは紛れもなく僕の愛した人だって。しかしながら本来ならば全くの別人でもある。だから、あの子は蓮美として生きるのではなく、今の生を謳歌しなければならい。だから他の男の元に行ったとしても……。割り切れていない、覚悟も足りてない、情けないッスね。」
「彼奴には尸魂界での記憶があり、姿形、内面、能力、魂魄の構成までも同じ。お主の専門である『科学的に見れば同一人物』とされる以上単純に考えてもよいだろう。本人も蓮美は過去の自分だと受け入れておるではないか。」
「そうなんスけどね……。」
「では、お主に問おう。避けていた問じゃったが、情けない面を見ていると夢見が悪くなる。お主は過去の蓮美に囚われて、今の彼女を愛す自信がないのではないか。」
胸が痛い、すぐには答えられなかった。
「実に不誠実じゃ。お主が愛したいのは、佐伯を通して見られる蓮美のこと。その事実に目を逸らしたいがゆえに『佐伯の人生を生きて欲しい』などと戯言を述べておる。では、お主の心に宿った嫉妬心はなにか。もしあの子が遠くへ行けば愛する蓮美の姿を彼女を通して見られなくなるからじゃ。」
「……。」
「言い返せんようなら、お主はポインティのことを特別に思うことなど許されんぞ。」
夜一さんが歩いて行ってしまった。
そうか、自分は彼女に責任転嫁していた。『第2の人生を歩んで欲しい』そうすることで、自分の愚かさを見ないようにしていた。夜一さんの言葉は心にあった靄を言語化したようなものだ。彼女の言う通りだった。
僕はあの子ではなく、過去の蓮美をあの子を通して見ている。そして、本当に愛しているのは。
自分の気持ちの整理をする必要がある。
