第57章 完現術篇 結
「ごめんなさいしに来ました。」
「謝りにッスか?記憶操作されてたわけッス。仕方ないでしょう。」
「仕方ないとおもってる?」
「じゃあどう思えばいいッスか?」
あーだめ、完全にこれは私が言い負かされるやつ。
「記憶操作されてる間の無礼をすぐに謝るべきだったと反省しています。」
「仕事があったんでしょう。アタシのことは後回しにすべきだ。それも仕方ないことッス。」
「でも喜助さん嫌な気持ちだったよね。」
彼は暫く黙ったあと、大股で歩き始めた。追うように私も早歩きする。
「喜助さんを嫌な気持ちにさせたことを謝りたい。貴方の気持ちの整理がつくなら、どんな言葉も受け止めるから、ね、ちゃんと話したい。」
雨が降ってきた。春の嵐というやつか、桜散らしの風が私達の間を吹き抜ける。その風の音の中に、ため息の音が混じった。
「こんな気持ちになるのは子どものとき以来ッスよ。」
「子ども?」
「久しぶりに色んな感情が混ざりあって、自分を制御できてませんでした。貴方のことになると精神がまだ未成熟であることを知らされます。」
いやいや、貴方の精神が未成熟だったら世の中の9割が未成熟だわ。
「確かに、不愉快でした。」
そんなストレートに言わないでくださいな。
「頭で理解してても、気持ちの整理ができなかったんス。これは自分の問題で、貴方から謝られることではありません。特段何かに気が触ったというわけじゃなくて。」
「わりと失礼なことしました。貴方のこと忘れてました。」
「それは仕方ない。割り切れなかったアタシの問題ッスよ。」
そう言うと、彼は振り向いた。
「雨に打たれてたら風邪ひきます。うちに戻ってあったかいお茶でも飲みませんか?ちょうどいいもの仕入れたんスよ。」
「喜助さん……」
「じゃ、どちらが速いか競走ッス〜。負けた方は、茶請けを買いにもう一度出るってことで〜!」
喜助さんが瞬歩で遠くへ行ってしまった。
「はぁ!?ずる!てか自分、駄菓子屋やん!茶請けの一つや二つ探せばあるんじゃないの!?」