第55章 完現術篇 序
「チャドさんや織姫さんが襲われたらどうするんです?」
「井上さんなら既に襲われてる。」
「はぁ?」
今日の様子を見る限り何も変わったことはなかった。しかし彼女の能力があれば怪我などすぐに治せてしまう。
「双天帰盾で治療したのかな、なんで教えてくれなかったの……。」
「彼女の霊力に乱れがあった。同時刻、茶渡君が井上さんの家に向かった様子があるから間違いなく、彼女に何かしらの危険が迫っていたことは確実だろう。しかし、彼女の霊力は暫くして平常に戻った。戦闘したわけではないと思う。」
「身の危険を感じたけれど、何も無かったってこと?」
「その可能性が高い。」
「そんな話、織姫さん一言もしてくれなかった。」
「信用されてないんじゃないか?」
「一緒にパフェまで食べたのになぁ。そうか、じゃあチャドさん探して話聞いてくるかぁ。貴方からは何も聞けそうにないし。」
「死神に話すことなんてない。」
「守護せよ 花月」
彼のベッドの傍らで始解をした。刀身から伸びた蔓が彼の腕を這う。
「何をする!」
「動かないでください。あれですよ、言わないなら体に聞くってやつ。」
「はぁ?!」
刀身から感じるのは滅却師の霊力。傷口に近づいて滅却師以外の霊力を探してみる。
「お?なんだこれ。」
僅かな違和感。しかしそれが何かということを明かすほどの量はない。
「もっと早く来たら分析出来たのかな。」
『流石にここまで微量だと特定は厳しいですね。でも、この違和感については気のせいではないと思います。』
「Qさんの霊力かどうかもわからないかな。」
Qさんというのは、月島秀九郎のことだ。現世ではどこで彼が話を聞いてるか分からないので、そう呼ぶことにした。
「石田さん、記憶障害とかあります?」
「なんだ?急に。」
「まぁ、これだけ怪我をしてるし、Qさんってわけじゃないですよね。私、無傷でしたもん……ぁぁぁあ!!」
織姫さんは身の危険を感じた、そして本当に襲われたのではないか? だけど、怪我はなかった。そして、彼に記憶操作をされた。だから、襲われたことさえ忘れている。
「帰ります!お大事に!」
織姫さんの元へ再び走った。チャドさんももしかしたら襲われてるのではないか。先にうちの隊に伝えようか。