第55章 完現術篇 序
「へぇ?そりゃ好い人なんでしょうね。アナタがそこまで惚れるということは。」
「なんです?その言い方。」
煽るような言い方に少しイラッときた。兎も角、押し倒されているような状態だからすぐにでもどいて欲しい。
「アナタの交友関係に口出すことはしないですが、そこまでストレートな言い方をされるとね?」
「何言ってるんです?」
「まじで覚えてないのか?」
「そんな感じだね……。」
廊下からこちらを覗くジン太と雨の姿が視界の端に見えた。
「店長、どんまいだな……。」
「泣かないで?」
彼らの慰めに、彼はひとつも表情を変えない。
怒りに近いような冷めた感情が伝わってくる。
「まっ、まぁまぁ、斬魄刀から聞いての通りなわけだし、あんま落ち込まない方がいいと思うぜ?」
「ええ。……アタシは席を外すので二人でポインティサンを見てて貰えます?」
「アッハイ」
浦原さんは私から退くと、目も合わせず部屋から出た。
「おいおい、ポインティまずいって。それだけはまずい。」
「なにが?」
「落ち込んでるよ……店長。」
なんで?
「まぁ、記憶戻ったらすぐ謝りに行けよな。」
「ねぇどういうこと?記憶って?」
聞けば、何者かによって私の記憶が改変されてるらしい。
「秀さんのこと?」
「あぁ、さっきの話聞いてりゃそいつのことだろうな。」
「水月も言ってた……。」
「水月からお前を抑えておくように頼まれてんだ。記憶改変の原因を取り除けば戻るかもしれないからってよ。お前の体の中に、術者の霊力が混じってるらしい。その霊力を取り除けば、記憶も元に戻るだろうから、花月に霊力を探らせてるんだよ。」
「でも、花月自身も術中だから難航してるみたい。だからじっとしてあげて?」
そこまで説明されたら暴れる気はしないが、秀さんの記憶が作られたものっていうことなのか?そんなこと有り得る?