第55章 完現術篇 序
「まさか万策尽きたわけではないでしょう。この手を払う術はあるはずっスよ。本気でやるのなら……ね?」
彼の目が本気になった。ピリッとした空気が部屋の中を包む。
「あるでしょ?斬魄刀や鬼道を使わなくてもパワーアップできる術が。」
他に術が無い訳では無い。彼がここまで煽る理由を考えると、何かを求めているように思う。
「忘れちゃったんスか?せっかく仲良くなった直子サンが悲しみますよ?」
直子さんと聞いて聞き馴染みある言葉なのにそれが思い出せない。
「やだな、本当に記憶ないんですか?」
「えっ?」
「虚化っスよ。」
ほろうか!??!
そういうと彼は大きくため息をついた。
「花月さん、水月さん、当たりっスね。そちらはお願いします。」
彼はそういうと私のことを押さえつけた。バランスが崩れて倒れ込む。
「はっ?えっ、ちょ、」
「確か、前にリサさんが記憶喪失系の少女漫画を朗読してまして。そのときの台詞にこんなものがありました。『身体で思い出させてやる。』」
「はーーーーーーーーっ!?」
「本当に忘れちゃったんスね?あんなことやそんなこと。」
「まっまっまって!?なにした?!なにした!!!?」
まっっったく心当たりないのだが!?
「なーんて、冗談っス。今の貴女には何もしてません。」
「冗談ならどいてください!!!」
「それは無理ですね。」
「なんで!?うら若き乙女に跨るなんて信じられない!秀さんにバレたらどうしよう!!殺される!」
すると、浦原さんは少し眉毛をピクリと動かした。
「その人、同じ学校の人っスか?」
「し、秀さん?違います!!!ほら、あの、ほら!! 」
秀さんを説明するのに、適切な言葉が浮かばない。でも、彼のことはしってるはずなのでは?
「月島秀九郎!知ってるでしょ??尸魂界でも現世でも有名ですし。」
「こちら側の人っスか?知らないっスね〜。」
「そんな……」
「随分と親しいようっスが、貴女にとってどのような人で?」
「どのようなって……簡潔にいえば、大切な人……」
「ほう。大切とは。」
「私にとっての心の支えであり、一緒に歩いていきたい人……だと思う。」
その言葉が出るのになぜか心が追いついてこない。秀さんは、私の過去現在と多大な影響を及ぼした人。そのはずなのに。