第55章 完現術篇 序
「不思議そうな顔してますね。」
「当たり前です。」
「うん。やはり花月サンを信じましょうか。」
なんでそうなるの!?ええい、やはりこうなったら縛道使って彼も縛ってやろうと霊力を動かした。
「無駄っスよ。霊力を上げれば花月さんが霊力吸収する仕様になってます。」
「何が目的なの?」
「目的は言ったでしょ、貴女を守る為だと。」
「具体的に言ってください。」
彼は顔を少し上げて私と目を合わせた。
「僕のこと、忘れたわけではありませんよね?」
んー?ええっと、浦原喜助さん……。
とぼそぼそ言ってみた。私の瞳の奥をぐっと捉える視線に思わず仰け反った。
「……ひぃっ……」
なんで、めっちゃ心臓ドキドキする!!よく見たら思ってるより顔整ってるし、声も素敵。なんで??私って老け専?!
「ちょっちょっちょっ、わかったので!!離れてください!心臓に悪い!あと、これも解いてください……。」
「わかりました。」
彼が鬼道を解除したその瞬間に、右手を彼の腹に当てた。
「白伏……ッ?」
白伏は、対象の霊圧を押さえつけ、周囲から霊圧を感じなくさせる効果と、気を失わせることができる。
彼の気絶を確認し、部屋を出たその直後、ぴしゃりと水音がした。それに気が付き振り返ると、眠っていたはずの浦原さんがいなくなり、代わりに床が水浸しになっていた。
あれは水月の幻術のひとつ、水分身だと直感した。水分身は、俗に言う分身の術だ。その水分身を通して技をかけることや、物理的な攻撃も可能であり、凡庸性が高いのだが、こんな使われ方をするなんて思ってもみなかった。
「流石の反応っスね。」
部屋に浦原さんが入ってくる。
「……」
「やだな、本物っスよ?それに、危害を加えたい訳では無いっス。大人しくしてくれませんかね?」
「何を企んでいるの?」
「さぁ?ただアタシは貴女の斬魄刀の言葉を信じただけのこと。あれだけお願いされちゃぁ、手を貸さないわけにはいきません。」
瞬歩で動こうとするが、彼に阻まれた。
「アナタの動きの癖、アタシが知らないわけないでしょ。」
白打に移ろうとするも、腕を押えられて全く歯が立たないことは明確だった。
「それなりに難しいっスよ。でも、長く見ていればわかるもんです。」
彼の手から逃れる術は無いのか……。掴まれた腕に力を入れて抵抗することしかできないのか。
