第54章 original~反実仮想篇~
この世界と、現実世界は時の流れが異なるそうで、ここで10年過ごしても現実世界では1日程度らしい。
「それでも貴方は現実世界に連れ戻そうするんじゃないですか?」
「どこかでその必要がないと思ってます。現実の記憶を戻した貴女が永遠にここにいることは望まないでしょうから。肩に乗るものを放棄できるような人ではないことはよく知ってます。」
「そう、だね。」
見上げると、虹が出ていた。
木々の葉が日に照らされてキラキラと光っている。
「現実世界ではどれくらいの時が経っているのでしょうか。」
「アタシがここに来たのは貴女がこっちへ来てから3時間後でしたよ。」
直後、護廷隊から派遣された死神がやってきた。
魂魄消失案件は無事解決。東仙は自死、ギンはどういうことか完全催眠下にあったことになり10年の減給処分で済んだ。
「どうっスか。これがあの事件が無かった世界っスよ。」
瀞霊廷が見渡せる小高い丘……といえば双極の丘のことだが、その場所に座り込んでいた。
「それにしてもまぁアレ壊すなんて、黒崎サンも無茶なことしましたよね。」
「燬鴣王の動き止めてたの私なんだけど。」
「初耳っス!」
「……喜助さんこそ、久しぶりの隊長はどうですか?」
私と並んで座るとため息をついた。
「ガラじゃないっスね〜。」
喜助さんの死神姿をまじまじと見た。
「似合ってるけどね。」
そう言って隊長羽織を少し引っ張った。
「別にこの地位に固執してるわけじゃありませんから。勿論、死神としてのプライドはありますよ。それは今でも変わらない。でも、この地位でなくてもそれは守れるものだ。そう思えば縛られず自分の好きなように研究するのがやはり性に合う。」
「私はどうかな。分からない。」
この世界の真実を知ったあと長く居すぎると、ここへの想いが強くなる。思い通りになる世界からわざわざ現実世界へ帰りたいと思わないだろう。ここで過ごす時間と現実世界の時間との差があるため、ここで長居しても大した問題ではないけれど、恐ろしいのはこの世界を意のままにして、この世界にいたいと心の底から思ってしまうことだ。喜助さんは貴方自身が決めることだと言いながらも、警告してきた。