第54章 original~反実仮想篇~
「どうしますか。」
「どうしようかなぁ。」
「帰るも帰らないも貴方の自由っス。」
「意外。帰りましょうって言うのかと思った。」
喜助さんは大きな石の上に腰掛けた。
「ここが何なのか、ご存知っスか。」
首を振った。
「自分が死神で、佐伯ポインティということもわかってる。この世界が現実でない事もわかる。けどまだ靄がかってて……ごめんなさい。」
「いいんスよ。そういうもんらしいっスから。知りたいっスか?」
「知りたいです。」
「今は敢えて詳細は省きましょう。この世界は貴女の夢の世界と言った方がいいかもしれません。未練ある過去と全く同じ世界を構築し、意識を閉じ込めてしまうことができる存在というものがいるそうです。つまり、これは貴女の脳内がみせるただの夢ではなく、第三者によってある時空に作られた空間。夢と比喩しているのは貴女がこの世界の主人公であり、創造主。創造主が望むならば好きなように物語を動かすことが出来ます。今の今まで、自覚が無かったようなので、六車サンが虚化したのも藍染が死んだのもこの世界では運命であった、ということですが、貴方が望むのなら、藍染を生き返らせることも可能です。この世界は貴女の手の中にある世界なんですよ。」
「喜助さんは……どうしてそんなことを。」
「貴女がアタシにそう言わせてるんです。」
喉が詰まった感覚がした。と思ったら喜助さんがどこからか扇子を取り出して口を隠した。
「な〜んて。冗談っス。貴女がどんだけ望もうとアタシのことは貴女の思うようにいきませんよ。」
「え、じゃあ私のことをもっと好きになってって望んでもだめ?」
そう言ってみると、扇子を動かしていた手をピタリと止めた。帽子を深く被ろうとしたのか、左手を頭頂部に置くが、今の喜助さんは死神スタイルだ。帽子を被ってるはずがないので、そのまま頭をかいた。動揺しすぎてくすっと笑ってしまう。
「参りましたねぇ。貴女そういうとこありましたね。」
「動揺してる喜助さんが新鮮で可愛いなと思います。」
「はぁ〜〜。大人を揶揄うもんじゃありませんよ。」
「この世界では私も大人よ。」
「調子狂うなぁ。」
「ほら、どうなの?」
「……望まなくても、ですよ。」