第54章 original~反実仮想篇~
「喜助さん、あたし……私、」
「貴女があの日々のことを振り返りたい、懐かしみたい、知りたいと思うのならば、いくらでも付き合いましょう。そうやってゆっくり進んでいきませんか。」
喜助さんが私の傍にとん、と降り立った。
「貴女がその姿のままに転生した奇跡を、僕と貴方の想いを無駄にしないように。」
そう言って微笑んだ。
冬の雪を溶かす花を芽吹かせる暖かな春の風が吹いたような気がした。
「さぁ、呼んであげてください。貴女の斬魄刀の名を。」
私の斬魄刀-
右手を前に出して掌を広げた。
「守護せよ 水月!」
降りしきる雨は私の味方。
「……水月、捕捉できる?」
『水はわたくしの味方。この雨の降る所はご主人様の攻撃範囲内です。』
「ええ、よく知ってるわ。……では、今度こそ私たちが勝ちに行こう。喜助さん、この子達へのお詫びもあるから、力は貸さないで欲しい。」
「わかりました。」
刀を構えて、藍染の眼前へと向かい斬り上げようとした。……しかし、気付けばそこには藍染はいない。
「君はもう既に完全催眠の術中にある。」
藍染は背後に立っていた。
「この雨の降る所は水月の攻撃範囲内つまり、私の領域よ。」
水の鉄砲が藍染の胸を貫いている。
「……なん……だ」
「鏡花水月の刀身ー随分とこの雨水で濡れて……これじゃあ私に催眠は効かないわ。」
「なぜっなぜ、なぜお前が……死神でもないお前が!!!」
私は、死神だ。
「護廷十三隊 一番隊 隊長 佐伯ポインティ。これが私。」
「こ、こんなもの、」
「完全催眠が無効化され、崩玉を取り込む前の貴方なら私でも勝てる。ここで披露できるのは丁度いい。喜助さんしか見ていないのなら。水月の卍解 試してみましょう。」
刀身がぎらりと光った。
「卍解 哭沢女神」
水月の鋒から一滴の水が零れる。また一滴、また一滴と足元の水溜りにぽたぽたと落ちていく。
「縛道の六十三 鎖条鎖縛」
「断空……っ」
蛇の如き鎖は断空により防がれたが、断空が通さないのは鬼道のみ。この刃は通す。
藍染副隊長の体内に刃がくい込んだ。
「……これしきのこと……!!」
藍染は斬魄刀を振り上げた。
「破道の九十 黒棺!!」
黒い箱の中に閉じ込められた。重力により、膝をつく。
「水月」
しかし、私は黒棺から逃れられた。
