第54章 original~反実仮想篇~
「そうと決まれば行きましょうか。」
再び布が私たちを包んだ。
「帰ってきたのか。そのまま逃げておけばいいものを。」
無傷に近い藍染副隊長と東仙要、そしてギン。
「要、ギン。手筈通りに。」
「はっ。」
「は〜ぁ直属の隊長殺害を三席に命じるなんて人遣い荒いですなぁ。」
平子隊長を殺害?
「ポインティ、大丈夫。貴女がそう信じていれば問題ありません。」
喜助さんがなにも焦っていない。ならば私も焦らない。平子隊長は強い。ギンも強いけど、負けるわけが無い。
「わざわざ殺されに来たのか。」
「そうむざむざ殺されるつもりはないっスよ。今の貴方ならば小細工せずとも倒せます。」
「では、君の本当の実力を体験させてもらおう。」
ポインティ、いいッスか。
貴女を呼ぶ声が聞こえているはずです。
しっかり耳を傾けてください。
貴女の持つそれは、僕以上に貴女を護る存在です。
必ず掴んでください。
藍染副隊長の刀の解放が見えないように、私は少し離れた。
「私を呼ぶ声の主よ、貴方たちは誰ですか。」
『共に心中する者。終の刻を主様に依存する存在。』
「私の魂……?」
『思い出してやんないと、拗ねた奴がいるぞ。ほら、もう俺らの声が届くんだろ。』
白く靄がかったものを払い除ける。
『ご主人様には私たちがいます。』
『名前呼んでくれなきゃ護れないよ!!』
『真を映すのはー』
喜助さんは完全催眠にかかりつつも、戦況は五分五分。
しかし、勝てるかどうかと言われたら際どいところだ。
いや、喜助さんは彼を殺そうとはしていない。
「……ポインティ、貴女が何者だったかしっかり思い出してください!」
「何者、」
「藍染がいなければ、あの事件が起きなければ、首を突っ込まなければ、そもそも崩玉を作らなければ、僕らはあの家で今でも幸せに暮らしてたかもしれない。僕だって寝る前にそんなことを今でも考えます。過去を懐かしみ悔やむのはなにも悪くは無い。けれど縛られたり固執することは、それより先の日々で出会った人達に対して無礼っスよ。」
紅姫の斬撃の音が響いた。
「貴女には沢山いるはずだ。家族、学友、そして部下。彼らをいなかったことにしていていいんスか。」