第54章 original~反実仮想篇~
「喜助さん、行かないで欲しい。」
そう言うと行きたくないではなくて?と尋ねられた。
「貴方がそこに行けば…………もう会えなくなる気がするんです。」
そう言うと喜助さんはそっと私を抱きしめた。
暫くそうしたあと、何も言わずにそのまま離した。
「僕が行かなくても、護廷隊は派遣を出します。命令も出ていませんし、貴女が行かないで欲しいというならば行きませんよ。ですが……そうなれば別の死神がどうなるか……。貴女はそれを良しとはしないはずです。それがどういう意味か知っているはずです。」
隊長羽織を強く握った。
「もう二度とヘマしません。この世界でも貴女にあんな思いはさせませんよ。」
言葉の一つ一つが魂に刺さる。
「私も……行きます。」
「行きましょう。」
湿気の多い空気の中、鬱蒼と生い茂る森の中を走り抜ける。喜助さんの持つランプを頼りにしてただひたすらに走った。
「疲れていませんか。もし良ければスピードを上げたいのですが。」
「ついていけます。大丈夫です。」
喜助さんが瞬歩で走りはじめた。それに倣う。
じめりとした空気のせいで汗ばんではいるが、思うよりも疲労感は少ない。
「喜助さん!」
「スピード落としますか?」
「逆です!喜助さんについていけると思いますので、もっと速くてもいいです。」
そう言うと喜助さんはあっという間に距離を離した。私もそれに続く。5m程後ろでピタリとつけながら向かった。
いつの間にか生ぬるい雨が降ってきた。
「この霊圧……って」
「藍染っスね。」
藍染、呼び捨てか。
「ポインティサン、虚化した死神の鎮圧に行けますか。」
「……この霊圧って六車隊長だよね。」
「ええ。貴女ならできます。」
彼ができるというのならば、たとえ隊長格でも鎮圧できる。
「貴女は虚化の心配は無いでしょう。それだけは伝えておきます。」
喜助さんは藍染副隊長の元へと行ったのだろう。
私ひとりで六車隊長の鎮圧……。
既に人のものと思えない咆哮を発している。
私を認識するやいなや走って突っ込んできた。
「縛道の三十七【吊星】」
周辺を囲い、六車隊長が出ないようにした、が容易く破られるだろう。
「六車隊長!お気を確かに!」
声など届くはずがないとわかっている。
肥大化した腕を振り上げて地面を叩き割ると、地割れが起きた、
