第54章 original~反実仮想篇~
「その夢の話、もう少し詳しく覚えてませんか。」
「すまないね。何分昔の話だから。それこそ大霊書回路へ行くといいさ。」
喜助さんはその足で大霊書回路へ向かうと言う。
ポインティさんは"家"に帰ってください。
と言い残した。え、帰っていいの?十二番隊でなく?と10分間そこで立ち往生していたが帰路に着いた。
夜中、喜助さんは帰ってきた。夕食を温めなおして食卓に並べる。
「いやぁ懐かしい味っスね。」
みそ汁を啜って一言そういった。
「それって美味しいってこと?」
「はい。やっぱりこの味が好きっス。自分でやってもこの味は出ません。」
「そんなに久しぶりかしら。というか、お味噌汁の作り方は喜助さんが教えてくれたのよ。多分。」
「アタシの作るソレと同じような味っスけど全然違います。」
「ふーん?……あ、どうだった?」
「これといった収穫はありませんでした、が。やはりあの二人に話を聞いてみて良かった。打開策は見つかりそうっス。」
「そうなんですか。良かったですね。」
というか、隊舎に戻らなくてもいいのか?
そのまま尋ねるといいんっスよ、と答えた。
「大丈夫っス。大事にはなりません。」
「私は明日はたらくよ?授業だもん。」
「えぇ残念っス。」
残念って……おいおい。
食後、喜助さんは写真を見ていた。
「また写真?」
「貴女との日々を振り返ってるんです。いつか貴女が忘れた時に、お話できるように。」
「なんで私が忘れる前提?」
喜助さんがにこやかな表情で写真をみているのが少し不思議で、その顔をじっと眺めていた。
「ねぇ。」
「なんっすか?」
「前にさ"この一件が終わったら言いたいことある"的なこと言ってなかった?」
そう言うと、喜助さんはあー、と目を逸らした。
「今じゃだめなの?」
「なんでそれはおぼえてるんっスか。」
「ほら、やっぱり言ってる。」
「まだダメです。」
「なんでー?気になる!」
「気長に待ってください。」
「私たちの時間は長いようで実は短い。なんとなく過ぎ去る日々の幸せを忘れ、日常が当たり前であるなどと勘違いしていたら、悔やむ日が来る。喜助さん、できる限り言いたいことやしたいことは先延ばしにしないようにしませんか。」
喜助さんは暫くアルバムの表紙を眺めていた。