第54章 original~反実仮想篇~
「あまり詳しく言えないんっスけど、極秘で追っている案件がありまして。京楽隊長の知恵を借りられたらと思いましてね。」
「おや?知識量に関して言えば君に負けると思うけどな。」
「いえいえ。自分には専門外の分野もありますからね。」
「それで?なにを聞きたいんだい。わかることなら手を貸すよ。」
「ありがとうございます。」
猪口と共にぼっかけが乗った冷奴と切り干し大根が出される。酒に合うものばかりを出されたということは飲まなければならないのか?
喜助さんは料理に見向きもせず、夢に閉じ込められた人の話を始めた。
「なるほどねぇ。」
難しい顔をして京楽さんが考え込んだ。
「まぁ食べなよ。ここの料理、とても美味しいんだ。」
「じゃ、お言葉に甘えて。」
「頂きます。」
味のしゅんだ切り干し大根をぱくりと頬張る。隠し味の生姜がピリッと効いていてとても美味しい。
「う〜ん。夢に閉じ込められた者を目覚めさせる方法……か。」
「それは比喩なんっスけどね。それに近い話とか聞いた事ありません?」
うーん、と唸って、一口お猪口に入ったら液体を飲んだ。
「まぁあるにはあるよ。夢……とは少し異なるけどね。」
「どんな話かお教え頂くこと、できますか?」
「あれはボクが若い時の話だ。そういう案件を扱ってた色男がいるよ。」
「回路に行けばその資料置いてますかね。何年くらい前の話か覚えてませんか?」
「……あれは……たしか……。」
あっと声を出したのは私だ。京楽隊長の後ろから白髪の髪をひとつに束ねた細身の男性が歩いてきた。
「浮竹隊長!こんちはっす!」
「すまないね、非番の日に上司の顔なんてみたかないだろ?」
「いえ!とんでもございません!」
「ははっ、気にせず楽しんでくれ。」
と死神たちに声をかけつつ、こちらの方へ向かってきた。
「おお、良い男が来たよ。」
京楽隊長が笑うと、浮竹隊長は眉を吊り上げた。
「全く、休憩はとっくに過ぎてるだろ?」
「まぁまぁそう怒っちゃやーだ」
やーだ、ってお茶目すぎる、この隊長。
「女将さん!酒は出さないでと頼んでいたのに!」
「浮竹隊長さんも飲みます?ちょうど五番地区から良い酒が入ったんですよ。そっちの若い隊長さんと、お嬢さんもどうです?」